第1回:求められる『コストをベースとしたマネジメント』

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第1回:求められる『コストをベースとしたマネジメント』

2007年3月22日

ある物流会社がこの4月から「生産管理部」という部署を新設した。れっきとした物流専業者で、生産活動を行う工場や作業現場を持つわけでもないのに、不思議な部署名である。

実は、この部署は「物流現場に生産現場のような科学的な管理を採り入れる」という使命を帯びて設置された戦略部門であり、「数字に基づいたローコストオペレーションを徹底し、厳しい環境下でも利益を計画的に生み出す現場に変革していきたい」というトップの「思い」を込めて名付けられたものだ。この「思い」は物流会社に限らず、荷主企業にも共感するものがあるはずである。

多くの企業が、これまでの延長線上で行う物流効率化に、ある種の限界を感じており、現状を打開するための突破口を求めている。ここでその鍵を握るのが『コストをベースとしたマネジメント』ということだ。生産現場と比べて、「物流現場はコストデータが乏しい」とよく言われるが、これはデータの量が少ないという問題ではない。「今日の物流活動にいくらかかったか」「その内訳は」「人件費や資材費がいくらだったか」、こういった結果のデータは物流現場にも既に存在する。乏しいのは、「コストを計画するためのデータ」、すなわち「今日のコストはいくらであるべきか」を合理的に計算するためのデータである。


コストと活動の因果関係を数字でつかむ「物流ABC」

具体的な話をしてみよう。例えば、あなたの物流施設で、「今日は注文800行分の出荷を予定している」と言われた場合に、今日のコスト予算を立てることができるだろうか。無論、注文の中身が分からないと正確な見積もりはできないであろう。それでは、概ね正確な予算を立てるためには、注文の中身について、何と何のデータをもらえばいいのか。『コストをベースとしたマネジメント』の基盤ができている現場ならば、この質問にたやすく答えられるはずである。以下、少し解説を加える。

『コストをベースとしたマネジメント』という場合に、管理する対象は「コスト」ではなく「活動」である。言うまでもないが、「コストは活動の結果としてかかってくるもの」であるから、コストそのものを管理することは、本来、不可能である。

さて、活動を管理するうえで不可欠なのは、「今日の活動に対して妥当なコストを事前に計画できる」ということである。そして、計画通りのコストでやりきるということを目標として活動を管理し、仮にコストが計画よりも余計にかかったのならば、その原因となっている活動を見直していく。これが、『コストをベースとして活動を管理する』ということの具体的中身である。

このような管理をするためには、「コスト」と「活動」の因果関係が明確になっていなければならない。つまり、「どの活動をどれだけやると、コストがいくらかかるのか」というデータを持っていることが不可欠なのである。これはコストを計画するためのデータでもあり、『コストをベースとしたマネジメント』の基盤となるものである。

これから紹介していく「物流ABC」は、物流コストを活動別に把握する原価計算手法である。物流ABCは、コストで活動を管理するために必要なデータを過不足なく捕捉するものであり、さまざまなマネジメントを展開していくことを可能にする画期的な技法であると言える。物流ABCの基本的な算定を経験しただけで、少なくとも、先ほど問うた「800行分の注文について、何と何のデータをもらうとコスト見積もりができるか」という質問には即答できるようになる。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

株式会社湯浅コンサルティング 代表取締役
湯浅 和夫氏

湯浅和夫 1946年  埼玉県生まれ
1969年  早稲田大学第一商学部卒業
1971年  同大学大学院商学研究科修士課程修了
1971年  日通総合研究所入社
1996年  同社経営コンサルティング部長
1999年  同社取締役
2001年  同社常務取締役
2004年  3月、同社を退職
2004年  4月、株式会社湯浅コンサルティングを設立し、代表取締役に就任。現在に至る。

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