第7回:「小売の在庫も見えるから営業の無理押しが抑えられる」

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第7回:「小売の在庫も見えるから営業の無理押しが抑えられる」

2007年3月22日

「ええ、そう聞いています。どうもビジネス習慣が根本的に違うようで、アメリカ式と・・・」

「うん、もう少し慎重に考えた方が良いかもしれない。それで他には?」

「もう一つの問題は、これが根本的な課題なのですが、システムを理想的に動かそうとすれば、店頭での売り上げ情報が繋がらなければならないということです。わが社では、小売店頭の売り上げデータは取れていませんから」

「そうか、そいつが取れれば、小売の在庫も見えるから営業の無理押しが抑えられるんだがなあ」

野口課長は、いつになく能弁であった。


専門家として扱われたのがうれしかったのかもしれない。

いつもの彼はどこか「はにかみ」がちで、そのくせ変にクールなところがあった。
相手を見てものを言うところもある。

しかし、システムの人間にしてはめずらしく、物流実務にも恐ろしく詳しい。
相当現場で叩かれたのであろう。

大久保があいまいな考えで意見を求めようとでもすれば、たちどころに叱り飛ばされ、その責めは妥協を許さない。

普段は冷ややかに大久保のやり口を見ているという人間である。

そのくせ二人は不思議に気が合って、野口はよく大久保を飲みに誘ってくれた。
そうしては、必ず仕事の話で議論になった。

いつの間にか、外は雨が降り始めたらしい。

副社長室の窓が雨で濡れていた。

午前中は、梅雨の晴れ間か、久しぶりに晴れ上がっていたのだが、また降り始めたらしい。

物流部の副社長報告会は、午後に入ってから松川副社長の着任前に提案され、懸案になっていた『サプライチェーン改革を目指して』を集中的に議論していた。

松川の反応は鋭かった。

川田部長と一緒に中心となって提案書をまとめてきた大久保は、それが次々と現実的な課題になっていくのを目の当たりにして、恐ろしくもあり、嬉しくもあった。

「実はな、社長もこの件については進めなければならないとお考えのようだ。私は、中心になって進めてくれと言われているんだ」

と、松川はこちらを真っ直ぐに見ながら静かに言った。そして続けた。

 

筆者紹介

東京ロジスティクス研究所
重田 靖男氏

重田靖男 1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。

【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員

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