第5回:「この在庫状況は放っておくわけにはいかない」

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第5回:「この在庫状況は放っておくわけにはいかない」

2007年3月22日

大久保は提案書に沿って、こうした内容を一気に説明した。

ある意味では経営陣への批判的内容も含んでおり、また他部門への変革を迫る内容となっているため、彼は言葉の使い方には必要以上に気を配って読み上げていった。

説明を終えると、背中と首筋が硬直しているのを感じた。

額から汗が落ちた。

「うん、進めるべきだろうな。社長もそう言っていた。しかし、この提案では具体性に乏しい、提言の域を出ていないな。反論の余地もある」


松川は、直ぐにそう言ってから、大久保に微笑みを向けた。

「そう固くならんでもいいよ。コーヒーでも貰って一服しよう」

いつの間にか3時を過ぎていた。

隣に座っていた川田が大久保の肩を軽くたたいた。

「川田君、いずれにしてもこの在庫状況は放っておくわけにはいかない」

「それに返品だ。これだけ返ってくるということは、もう小売が抱えられなくなってきているということだよ」

「ええ、営業は必死に抑えているようですが、前社長を信奉して協力いただいた有力店もさすがに・・・」

「うん、それに在庫の3分の1は偏在在庫だな。工場の生産体制も思い切った変革が必要だろう」

「大量生産ロットで生産原価を低減するという考え方を根本的に改めなければ駄目だ」

「家電製品なんかも、いまはベルトコンベア方式をやめているらしい。いわゆるセル生産方式といって、2〜3人が1か所で最初の工程から完成までやってしまう方式だ」

「偏在在庫のほとんどは新製品発売時の見込み生産の残りです。少々乱発が過ぎましたね」

「いや、それもそうだが、新製品は小売にとっても売り上げ拡大の目玉だ。こいつが引き金になって来店客数を稼ぐんだからなあ」

「川田君だって、営業に居たことがあるからわかるだろう」

「ええ、まあ。しかし、あれだけ多いと目玉が目玉にならなくなります」

「うん、しかしフレグランが出すから前社長も躍起だったんだろうな」 

 

筆者紹介

東京ロジスティクス研究所
重田 靖男氏

重田靖男 1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。

【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員

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