第24回:「はい、阪田博之というのですが…」

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第24回:「はい、阪田博之というのですが…」

2007年6月 8日

 ところが最近、彼が、自分の先輩で大久保さんというのがトーホーにいるはずだが知っているかと聞くから、詳しく聞いたらどうも大久保課長のことらしいのだ。

 それで、いま物流部の中心的人材で最近課長に昇進したことなどを話したら、なんでも大学の剣道部の先輩だから親しくさせて頂いているけど、1度、相談したいことがあると言っていたので、青木は自分の人となりを聞くのではないかと心配しているという話である。


 それでさっきから大久保に話したものかどうか、皆でわいわいやっていたというのだ。

 「へえ、京浜大学の剣道部だって? それで名前はなんと」

 ここまで喋られては、当の本人である青木は黙っている訳にはいかない。

 「はい、阪田博之というのですが…」

 「ああ、阪田君か。よく知っているよ。確かお父さんのやっている商事会社で営業をやっているとか言っていたよ。明るくて元気のいい奴だ。そうか、あいつ青木さんのボーイフレンドだったのか」

 「何か大久保課長さんに相談したいとか言っていたのですが…」

 「あっはは、あいつは自分のガールフレンドについて人に身元調査みたいなことをするような奴じゃないよ。あいつは、あれで結構もてるからね。女性を見る目は僕なんかよりよっぽど確かだよ」

 阪田博之、28才。彼は、大学を出てしばらく父親の会社で働いていたが、このところ、かねてから考えていたアイディアの商品化に没頭している。

 インターネット通信ができる腕時計である。すでに、設計図面と論理システムは出来上がり、特許出願を終えた。いま、彼が全神経を傾けているのは、それをどう商品化するかである。

 父親からはなんとなく胡散臭そうに見られているのは知っていた。
 「どうも、このところ博之は仕事に力が入っていないようだ。会社にいても、時折、ボンヤリと空を睨んでいたり…。第一、終礼が鳴ればそそくさと退社するようになった。誰か好きな娘でも出来たんだろうか…」

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

東京ロジスティクス研究所
重田 靖男氏

重田靖男 1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。

【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員

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