第23回:「大久保が一身上の相談があるというからね」

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第23回:「大久保が一身上の相談があるというからね」

2007年5月10日

 素直に、「たまには私も誘ってください」と言えばいいところを、こういう言い方をする。

 要するに野口は川田に甘えている訳だが、知らない人間にとっては、絡まれたと勘違いされることも少なくなかった。

 大久保は、一瞬ヒヤリとして川田の様子を窺ったが、さすがに川田は野口の癖を知っていると見えて、
 「うん、大久保が一身上の相談があるというからね」と逆に野口をからかった。

 「えっ、大久保が? どうかしたのか」と、根は人の良い野口は真顔になって大久保に聞いた。


 大久保がにやにやしていると、「あっはは、こいつの一身上の都合ってのは、SPF─50の追加生産の話だよ。大久保があんまり真剣に悩んでいるものだから…。市場調査でもしたらどうだと言って、ここに来たわけさ」

 「何だ、脅かさないでくださいよ」

 「ところで、野口君。君に一度相談に乗って欲しいことがあるんだ。来週にでも『笹もと』に一度付き合ってくれよ」と言って、川田は東京城南大学の高橋教授から言われた、店頭情報を吸い上げるためのシステムについて野口課長の意見を聞きたいと切り出した。

 大久保は、川田はちゃんと野口の真意を見抜いていると思った。野口は、一も二も無く納得して急に多弁になった。さっきまで、野口の部下である女性社員の青木千絵の話で盛り上がっていたのだという。
 
  野口は、しきりと青木に話をしろと仕掛けている。ためらっている青木に代わって野口の話すところによれば、かねて青木には親しいボーイフレンドがいて、時々、デートと称して早々と退社するから、今日はその男のことを聞かせろということになったという。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

東京ロジスティクス研究所
重田 靖男氏

重田靖男 1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。

【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員

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