第22回:「部長、大久保と密談ですか?」

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第22回:「部長、大久保と密談ですか?」

2007年3月22日

スナック『まゆ』は、小料理『笹もと』の女将の娘がやっている小さな大衆スナックである。銀座といえば聞こえはいいが、銀座の少しはずれの裏通りにある小さなビルの5階にある。

銀座には、もちろん華やかな高級クラブが軒を並べているが、それはそれとして、一本裏通りに入ると気の張らない、こうした小さな大衆スナックもひしめきあっている。

若いビジネスマンたちでも気軽に寄れるから、景気回復ももう一つといっても案外客は多いし、不思議と常連客もある。

スナック『まゆ』もそんな店の1つである。もともと小料理『笹もと』の女将がやっていたものだが、いつの間にかそれを娘に譲って自分は『笹もと』を始めたのである。


部長の川田はその時代からの常連だから、物流部の連中も何かといえば出入りしていた。店は女将が始めた頃に内装したもので、シックなブラウンと白を基調にしたすっきりとしたレイアウトで、ゆったりと落ち着いた感じである。だが、娘がやるようになってから、さすがに雰囲気が若返った感じがする。

川田と大久保が扉を開けると、物流システム課の野口課長が数人の物流部の若い連中を連れていた。

『笹もと』の女将が電話を入れたのであろう、そこに2人の席が用意されていた。

「部長、大久保と密談ですか?」

野口課長は、冗談とも本気ともつかぬ言い方をした。大久保には野口の真意がすぐ読めた。プロジェクトの関係や、物流企画部という業務の関係で、どうしても川田と大久保は打ち合わせの機会が多くなる。野口から見れば、「たまには俺も仲間に入れて欲しい」と言いたいところだろう。

大久保は、野口にはよく誘われて飲みに行くので、酒が入った野口の皮肉ったモノの言い方には慣れている。だから、そこに悪意もなければ皮肉があるわけでもない。それが、酒が入った野口の癖であることを知っていた。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

東京ロジスティクス研究所
重田 靖男氏

重田靖男 1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。

【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員

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