第2話:「俺は、あんた達が困っているところを聞きたいんだ」

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第2話:「俺は、あんた達が困っているところを聞きたいんだ」

2007年3月22日

株主総会も終わって、松川は正式に副社長に着任した。

管掌は、経営企画・生産・購買・物流・情報システムの各部である。

早速、各部からの業務報告会が開催された。

松川は、しばらく海外事業を中心に担当してきたので、新しく管掌になる各部門の業務内容を改めて把握したいということである。

出席者は、松川の指示により、各部門とも部長および管理職全員で、部ごとに時間が設定された。


物流部は7月3日終日である。

部長の川田と物流企画課長、業務課長、物流システム課長、物流技術課長が出席者だが、それに大久保も出席することになった。

大久保は課長ではなかったが、例の「サプライチェーン改革を目指して」の提案書を中心になって纏めたということで、松川副社長から出席せよとのことであった。

副社長室は思ったほど広くはなかったが、それでも10人ほどのミーティングができそうなテーブルがあり、その横に革張りのゆったりした応接セットがあった。


ブラインド越しに柔らかい朝の光が洩れている。多分まだ整理中なのであろう、部屋のあちこちにダンボール箱がいくつか口をあけたまま置いてある。

大久保は、一番入り口に近い位置に着席した。初めて入る副社長室である。緊張していた。

松川と川田が一言二言言葉を交わしてから、改めて自己紹介を終え、早速、業務報告が始まった。

それぞれ、各課が進行している業務の内容と進度状況を担当課長が報告していく。

松川は、熱心に聴いているようだったが、何回か秘書からメモが入って、中断した。

大久保の出番はまだない。

しかし、松川の質問は切っ先が鋭いと思った。課長が意識してさらりと切り抜けようとする部分に必ずストップが入った。

「きれいに報告しなくても良い。俺は、あんた達が困っているところを聞きたいんだ」

松川はにこりと笑った。

その場の緊張感が、一瞬解けた。川田とはまた違った人懐こさを、大久保は感じ取っていた。

 

筆者紹介

東京ロジスティクス研究所
重田 靖男氏

重田靖男 1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。

【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員

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