第15回:「店頭と在庫のかけひき」

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第15回:「店頭と在庫のかけひき」

2007年3月22日

「有力小売店の社長が、直接うちの社長に電話をかけてきて『この品切れを何とかしてくれ』と言ってきたらしい。川田部長が呼ばれて行ったよ」

大久保がそう言うと、生産部の西本課長がすぐに反応した。

「ああ、俺も呼ばれた。うちの部長が席を外していたから、お前でいいといって松川副社長に呼ばれた。マルミヤさんは神戸の有力店で、支店を含めると年商1億を超える。前社長が通いつめて、トーホーファンにしたんだ。マルミヤさんにしてみれば、一体どう考えているんだということだろう。今週の追加生産分の中から、受注残を後送することで物流業務の半田課長と調整したよ」


「うん、それはそうとして次の追加増産はどのくらい可能なんだ」

「生産ラインは空けられるが、問題は材料のキャップだ。当初販売計画の二倍以上になっている。今月中旬から仕入先はほとんど徹夜続きの状態だ」

「先行仕入れで大量に在庫を持っている店もあるらしいが、実際の店頭の状況はどうなんだ」

「支店の営業が訪問しているところは、足りないから来いという店ばかりだからね。実態が見えない。大型店で『注文すれば、すぐに持ってくるだろう』というところが品切れに泣かされているらしい」

「もう夏も終わりだろう。このまま増産すれば、また返品の山になるんじゃないのか。今までの偏在在庫も、原因はほとんどこの手の追加増産が命取りになっている」

「うん。まあしかし、日焼け止めは、いまは紫外線防御ということで必ずしも夏ばかりではないから。秋になっても多少は動くからね」

「しかし、量的にはしれているだろう。偏在の山になる危険は充分にある。残れば来年まで動かないし、来年はフレグランだって新製品を投入してくるはずだ」

「大久保課長、やはりどうしても小売店頭での現実の売り上げと在庫状況がリアルタイムに分かる仕組みがないと、結局同じことの繰り返しだよ」

「今年の夏の長期予報はどうだったんだ」

「2、3社の予報を買ったが、いずれも『去年ほどの冷夏はない。例年なみで梅雨明けは七月中旬以降。比較的晴天が多い』というところだった。まあ、SPF50ということで他社の40を超える新製品ということもあって、相当強気の計画で臨んではいたんだが…」

こんな具合で、熱気あふれる議論が続いた。     

 

筆者紹介

東京ロジスティクス研究所
重田 靖男氏

重田靖男 1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。

【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員

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