第10回:「呼び出しが来ているらしい」

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第10回:「呼び出しが来ているらしい」

2007年3月22日

トーホーでは、課長以上の管理職定期異動発令は、全国の関連事業所も含めて全対象者が本社の大会議室に召集され、そこで社長から一人ひとりに辞令を手渡されるのが通例になっている。

対象者には、召集日の4、5日前に連絡がある。社内ではこれを、『呼び出し状』と呼んで、こればかりは電子メールではなく、親展の封書で届く。これを貰うと、「あ、異動か」と初めて知らされる。

しかし、この『呼び出し状』には異動先については一切触れられていない。社長から辞令を手渡されるまで、自分がどこへ異動するのかは分からないのだ。

この時期、人事部からの封書で、しかも親展だから、机の上に置かれているのを見れば誰でもすぐに分かる。早速、私設人事部があちらこちらで動きだす。いわゆる『噂人事』である。


「加藤さんと渡辺さんに呼び出しが来ているらしい。企画部の部長席が空いていたから、渡辺さんが行くのかな…」

「いや、彼は少し早いんじゃないかなあ。渡辺さんは、工場次長の席かもしれない。加藤さんは経理畑だから、新会社の財務部長だな…」

「うん。聞いたところによると、加藤さんは新会社の早田社長と九州支店で一緒だったということだ。経理畑は人材がいないからな…」

「しかし、渡辺さんの企画部長もあるんじゃないか。なかなか切れるらしいから…」

と言った具合で、勝手な人事を始めるのだが、不思議とそれが『当たらずとも遠からじ』なのである。なかには、異常に人事情報に詳しい者がいて、辞令交付日が近づくと、それとなく皆そこに集まってくるという困った現象なども起きる。この時期、喫煙コーナーでは、異動の噂でもちきりになるのだ。

辞令の交付は、朝8時から始まるのが通例だから、辞令交付日の前日の夕方には遠方事業所からの呼び出し組が三々五々、関連部門の顔見知りの席に立ち寄る。そこでも、予想人事談義が始まるのである。

もちろん、大久保にも『呼び出し状』が来ていた。

 

筆者紹介

東京ロジスティクス研究所
重田 靖男氏

重田靖男 1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。

【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員

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