第31回:多岐にわたる在庫差異

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第31回:多岐にわたる在庫差異

2006年6月 1日

A社の物流改善において、在庫精度を向上させることは必要不可欠であると考えた。そこで、まずは、在庫差異が発生する原因をA社のS課長と共に抽出した。その結果、次のような項目が挙げられた。
(1)出荷検品を行っていない
(2)他部署のメンバーが勝手に商品を持ち出してしまう
(3)誰でもPC在庫数を修正できてしまう


 1については、物流部の問題であり、近い将来には必ず実施しなければならないものである。むしろ今まで行っていなかった方が不思議だ。O部長も出荷検品の必要性については認識されていたが、作業工程が一つ増えることで人件費が増えることや今まで得意先からのクレームはほとんど無いことから、実施には消極的であった。
 2については、A社に限らず、倉庫と同じ建物、もしくは近くの場所に本社機能を持っている企業にはよく見受けられる現象である。悪気があって持ち出すのではなく、さらに売り上げを伸ばしたいがために、商品をサンプルとして使用しようとして持ち出すのである。この際、サンプル持ち出しルールは決められているものの、守るメンバーと守らないメンバーがいるのが実態である。しかし、会社の資産である商品を勝手に持ちoすことは絶対にあってはならない。この意識を全従業員が持ち、教育していかない限り在庫差異は無くならない。
 3については、A社の場合、特に仕入れ担当者がPC在庫数と実在庫数とに差が発生している商品について、自分の眼で実在庫数を確認した後に行なっていた。一見、問題が無いように思われるが、他の場所に商品を保管してある場合もあり、仕入れ担当者が在庫数を修正したことによって在庫差異が発生してしまっているケースもあった。
いずれにしても、在庫差異が発生する原因が多岐に渡っており、何が原因か、もしくはどこの部署が原因かを特定することができない環境にあり、このこと自体が一番の問題であると考えた。原因が特定できないため、各部署とも「在庫差異が発生するのは自分の部署が原因ではなく、他部署が原因である」という意識を強く持ってしまっていた。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

株式会社日本ロジファクトリー
青木 正一氏

青木正一 1964年11月13日生まれ、京都産業大学経済学部卒。
学生時代に数々のベンチャービジネスを行い、卒業後、ドライバーとして大阪佐川急便入社。1989年株式会社船井総合研究所入社。物流開発チーム・トラックチームチーフを経て、コンサルティングでは対応できない顧客からの要望を事業化するという主旨で1996年“荷主企業と物流企業の温度差をなくす物流バンク”をコンセプトに、物流新業態企業「日本ロジファクトリー」を設立。代表取締役に就任。

 主な事業内容として「現場改善実務コンサルティング」「物流専門人材紹介(ロジキャリアバンク)」「物流情報システム構築サポート(ロジシステムデザイン)」を行なっている。
また、物流業界におけるコンサルタントの養成、人材の採用、育成、M&Aといったプロデュース業務も手掛けている。
最近では、産業再生機構からの要請を受けるなど、「物流再生」に力を入れている。

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