第30回:在庫確認の手間

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第30回:在庫確認の手間

2006年6月 1日

A社では得意先からの注文数が5に対して、実際の商品数が3しかない場合、得意先に連絡することなく3で出荷してしまっていた。ピッキングが終了した後に出荷確定入力を行う理由はこのためである。このようなことが発生する原因は、PC在庫数と実在庫数が合っていないことと考えた。実際、ピッキングが終了した出荷指示書を見ると、出荷指示行数20に対してピッキング行数(出荷行数)が3しかないものもあった。


従業員には「在庫が合ってないことは当たり前」という意識があり、簡単に「商品なし」として処理してしまっていた。そのため、出荷指示行数に対して未出荷行数の割合は10%115%前後と非常に高い数字になっていた。在庫が合っていれば、出荷指示書の数字=納品書の数字となり、出荷指示書と納品書、送り状を同時に出力することが可能。そうすればダンボールに宛先名や梱包番号を手書きする必要も、ピッキング終了後に出荷確定入力を行う必要もなくなるのである。
 在庫数が合っていないことが原因で物流部内に発生する作業に、『得意先からの在庫確認』がある。得意先から在庫確認の電話が入ると、電話を受けたメンバー(主に営業助手)から倉庫内にいるメンバーに対して社内放送で「在庫の確認願います」というアナウンスが流される。この在庫確認依頼は、最優先業務と社内的に決定されているが、通常業務の他に対応しなければならず、また、非常に手間暇がかかるため、積極的に対応するメンバーとそうでないメンバーとに差が生じていた。
 特に休み明けの月曜日に問い合わせが多く、ひっきりなしに社内放送が入っている状況であった。1件の問い合わせに対して完了するまでに約10分かかり、看過できない業務になっていた。そのため、O部長をはじめ物流部内ではいかに早く完了できるか、日々、頭を悩ませていた。
 しかし、本来であれば得意先から問い合わせが入った時点で、PC在庫数を確認し、その場で返答できるはずの業務である。A社の場合、PC在庫数と実在庫数とが著しく合っていないために発生している『無駄な作業』であると言わざるを得ない。問い合わせに対していかに早く完了できるかを考えることも必要であるが、より長期的な視点で考えれば、PC在庫数と実在庫数を合わせること、そのためには在庫差異が発生する原因を追求し、どうしたら在庫が合うようになるのかを物流部だけでなく、全社を巻き込んで行うことの方が重要であると考えられた。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

株式会社日本ロジファクトリー
青木 正一氏

青木正一 1964年11月13日生まれ、京都産業大学経済学部卒。
学生時代に数々のベンチャービジネスを行い、卒業後、ドライバーとして大阪佐川急便入社。1989年株式会社船井総合研究所入社。物流開発チーム・トラックチームチーフを経て、コンサルティングでは対応できない顧客からの要望を事業化するという主旨で1996年“荷主企業と物流企業の温度差をなくす物流バンク”をコンセプトに、物流新業態企業「日本ロジファクトリー」を設立。代表取締役に就任。

 主な事業内容として「現場改善実務コンサルティング」「物流専門人材紹介(ロジキャリアバンク)」「物流情報システム構築サポート(ロジシステムデザイン)」を行なっている。
また、物流業界におけるコンサルタントの養成、人材の採用、育成、M&Aといったプロデュース業務も手掛けている。
最近では、産業再生機構からの要請を受けるなど、「物流再生」に力を入れている。

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