第28回:緊急時に対応できる体制

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第28回:緊急時に対応できる体制

2006年6月 1日

驚きだったことは、前回まで述べたM氏の取り組みが前任からの引き継ぎではなく、M氏のキャリアの中で培ったものであるという点である。ほとんど何も残されていない状態からM氏が配車業務を引き継ぐことになり、経験が全くなかったM氏は、業務そのものがコストである配送がどうしたらセンターの利益化に貢献できるかを考えたそうだ。


 現場の環境を効率化し、物流企業の競争を促す取り組みは、M氏が少しずつ改善を進めた結果、自然と積み上げられたものだろう。M氏自身も、「現状の業務が他拠点と違っていると考えたこともなかったし、これを誰かに教えろと言われても教え方がわからない」とおっしゃっていた。そこは我々コンサルタントが間に入ることによって、M氏の取り組みをベースに配車担当者の業務を体系化し、他拠点にも取り入れてもらえるような形で横展開を行った。
 その結果、コスト削減という形で結果が表れるには時間がかかっている拠点もいくつかあるが、着々とK社の全社的な配送費比率は低下してきている。それだけではなく、各配車担当者に現状に満足することのない改善意識が高まったことや、キャリアの浅い担当者には「自分のやることの方向性が少し見えた」という意見もあり意識的な効果も大きかった。
 今回の事例は、荷主企業の配車担当者における取り組みであったが、これは物流企業でも同様のことが言えるであろう。物流企業にとっても配車担当者は、現場で利益を創出する担当者として位置付けられる必要があるはずだ。コースごとの採算を把握し、傭車の活用や配送コースの再編成などは配車担当者が率先して行うべきである。一コースが1人のドライバーの城になってしまうと、ドライバーによって仕事をコントロールされてしまうことが懸念される。さらに、緊急時にそのコースを回れるドライバーが限られてしまっていると、荷主との信用問題にも関わってくる。M氏のように頻繁にドライバーの変更やコースの再編はできなくとも、ドライバー同士を競争させることや業務を標準化して緊急時に対応できる体制を整えることも配車担当者の重要な役割で ると考えられる。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

株式会社日本ロジファクトリー
青木 正一氏

青木正一 1964年11月13日生まれ、京都産業大学経済学部卒。
学生時代に数々のベンチャービジネスを行い、卒業後、ドライバーとして大阪佐川急便入社。1989年株式会社船井総合研究所入社。物流開発チーム・トラックチームチーフを経て、コンサルティングでは対応できない顧客からの要望を事業化するという主旨で1996年“荷主企業と物流企業の温度差をなくす物流バンク”をコンセプトに、物流新業態企業「日本ロジファクトリー」を設立。代表取締役に就任。

 主な事業内容として「現場改善実務コンサルティング」「物流専門人材紹介(ロジキャリアバンク)」「物流情報システム構築サポート(ロジシステムデザイン)」を行なっている。
また、物流業界におけるコンサルタントの養成、人材の採用、育成、M&Aといったプロデュース業務も手掛けている。
最近では、産業再生機構からの要請を受けるなど、「物流再生」に力を入れている。

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