第183回:衰退はあっという間

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第183回:衰退はあっという間

2009年6月26日

 先月、ある物流会社の社長が当社を訪れた。この会社は、運賃の値引きはほとんどせず、貸切ではなくスポット中心。また顧客数も多く、我々の知っている物流会社でも優良企業であった。社長は2代目として二十代から先代の経営を手伝い、経常利益率7%、無借金経営を続けていた。

 しかし、久しぶりに会う社長の様子が優れなかった。持ち前のキープスマイルが消えていた。ここ3年くらいの中で、競争なき市場ともいえた自社の業務サービスに他社が次々と参入し、価格競争に入ってしまったという。そのため、得意先の25%が他社に流れた。また、将来を期待していた所長に不正が発覚し、懲戒解雇を行った。優秀なドライバーも他社に引き抜かれていった。

 要因として、人が育たなかったことや、地方経済の低迷などがあったが、最大の要因は社長自身にあった。長年にわたる高収益体質と無借金経営。ほかの経営者から比べると、危機感が薄かったと感じるのである。

 会社には1番に出社するものの、社業より業界の付き合いの方が忙しかった。営業らしい営業も行っていなかった。私は売り上げの伸びが止まり、利益率が下がった年に「社長、早く手を打たないと、あっという間に利益を食いつぶしますよ」と警告し、具体的に5つほどの実施項目を挙げ、その進め方を伝えたが、「まだ何とかなると甘く見ていました」と社長。

 今やグループ2社とも減収減益の赤字となり、いよいよ借り入れをしなければならないという。しかし、2期連続の赤字となると、一般的に銀行はお金を貸したがらない。悲しいかなゴールなき戦いを行っている経営者にとって、成長時は一つひとつの階段をじわじわ駆け上がるが、衰退期はあっという間に転げ落ちてしまう。衰退の原因は必ず成長期に芽を出しているというが、本当であると思う。


※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

株式会社日本ロジファクトリー
青木 正一氏

青木正一 1964年11月13日生まれ、京都産業大学経済学部卒。
学生時代に数々のベンチャービジネスを行い、卒業後、ドライバーとして大阪佐川急便入社。1989年株式会社船井総合研究所入社。物流開発チーム・トラックチームチーフを経て、コンサルティングでは対応できない顧客からの要望を事業化するという主旨で1996年“荷主企業と物流企業の温度差をなくす物流バンク”をコンセプトに、物流新業態企業「日本ロジファクトリー」を設立。代表取締役に就任。

 主な事業内容として「現場改善実務コンサルティング」「物流専門人材紹介(ロジキャリアバンク)」「物流情報システム構築サポート(ロジシステムデザイン)」を行なっている。
また、物流業界におけるコンサルタントの養成、人材の採用、育成、M&Aといったプロデュース業務も手掛けている。
最近では、産業再生機構からの要請を受けるなど、「物流再生」に力を入れている。

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