第91回:揚子江の三峡ダムと中国内陸の物流

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第91回:揚子江の三峡ダムと中国内陸の物流

2006年8月 6日

 中国・揚子江の中流域の三峡に、巨大なダムが建設された。これが三峡ダムである。そもそも揚子江に巨大ダムを建設しようという構想は、1919年に孫文が提唱したことから始まる。そして、揚子江の大洪水などをきっかけに建設の機運が高まり、1993年に三峡ダム建設が着工され、「万里の長城建設以来の大工事」として注目されてきた。三峡ダムが目指す総貯水量は日本のダムの貯水総量の約2倍に相当するという。


 三峡ダムの水位落差は68メートル。船の運航のために5段水門が修築され、段ごとに20メートルの高低差を埋める。現在水位135メートル(海抜高度)で、4段を使用し、最も高い5段目は2009年に水位が175メートルになったとき使う予定である。三峡ダムの完成により、川幅が狭く交代通行できなかった場所も、四隻の船が同時に通過可能になる。中国物流インフラの大きな課題でもある、内陸部の複合一貫輸送の高度化を解決する有力な選択肢の登場といってもよいだろう。

 近年の中国の経済成長は目覚しいものがあるが、半面、大気汚染などの環境問題は、依然多くの課題を抱えている。二酸化炭素の排出量もアジアの全排出量の約50%に達している。WTO加盟以降の経済開放による自動車の急速な普及に、幹線道路の建設、整備が間に合わないという状況が続いているわけである。また内陸部では揚子江などの河川の汚染が深刻な問題になっている。

 こうした流れの中で、内陸部の水路の充実にもつながる三峡ダムの建設の意義は、環境、物流の両面的な視点からもきわめて大きいといえよう。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

鈴木 邦成氏(すずき・くにのり)

鈴木邦成 物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。

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