第78回:都合よく解釈されるSCM

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第78回:都合よく解釈されるSCM

2006年5月 7日

 従来、日本企業の在庫に対するアプローチは企業単位で行われてきた。
しかし、SCMが導入されることで供給連鎖全体での在庫調整も必要になってくる。コストに対する意識も企業ではなく、サプライチェーン全体で考えることが要求される。


 けれども日本ではパートナー企業との利益共有という考え方がなかなか実行されないようだ。結局、「総論賛成、各論反対」ということになり、全体最適の実現は遠回りしがちだ。また「完全な模範となるSCM」というものは存在しないため、SCMという言葉がひとり歩きすることもある。実際、本場のアメリカでもSCMの詳細な定義についてはさまざまな意見がある。

 もちろんゴールドラット博士の「制約理論」がベースにはなる。しかし切り口によってニュアンスが相当、変ってくるため、誤解も生じやすくなっている。例えば、キャッシュフロー、スループットを重視する「キャッシュフロー重視のSCM」、物流を重視する「ロジスティクス重視のSCM」、情報共有を重視する「情報重視のSCM」といった具合に何に重点を置くかでSCMの方向性や戦略は相当に異なってくる。

 基本となるコンセプトを十分理解したうえで導入する必要があることはいうまでもないだろう。

 しかも日本の場合、SCM理論の紹介が実務に先行することが多かったため中途半端に理解され、都合よく解釈されることが従来は多かった。そしてこれが「疑似SCM」を誘発することにもなっていた。中途半端な「物流改善」がSCMと銘打たれて導入された失敗例も少なくないのである。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

鈴木 邦成氏(すずき・くにのり)

鈴木邦成 物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。

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