第59回:民主化に苦しむアルゼンチンポスト

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第59回:民主化に苦しむアルゼンチンポスト

2005年12月25日

 アルゼンチンでは軍事政権時代に郵便自由化が進展した。90年代初頭、アルゼンチンの郵便事業は表向き国家独占だった。だが、実際には民間企業が脱法的なかたちで市場に参入していた。国営郵便事業体もこうした民間の〝非合法〟ビジネスの影響を受けて赤字が拡大。また郵便サービス全体の質もレベルも民間の参入で低下した。
 こうした背景の中で、政府は郵便事業の自由化を断行。その結果、数多くの民間郵便企業が誕生した。200以上の民間郵便企業が出現するなど、郵便競争は激化した。また民間郵便企業が高収益の見込める都市部など、特定地域の郵便配達を優先したためにユニバーサルサービスも崩壊の危機を迎えた。


 さらに97年に、郵便事業体は民営化された。郵便事業は金融機関を中心とした企業連合に30年の事業権を付与して売却した。新経営陣となった企業連合は10年間で総額2億5000万ドルの郵便インフラの整備やユニバーサルサービスを義務付けられた。
 しかし、アルゼンチンポストの経営が黒字化することはなかった。結局、は01年に会社更生法の適用を申請。郵政民営化は仕切り直しを迫られた。
アルゼンチンポストの失敗の最大の原因は民営化後の受け皿となった企業連合の経営見通しの甘さにあるといわれている。民間企業に旧国営郵便事業体の郵便インフラを開放したこと(郵便ネットワークのアンバンドル化)が経営を傾かせた最大の要因といわれている。アンバンドル化によって民間企業は初期投資の必要もなく容易に郵便インフラなしで配達業務に参入が可能となったからだ。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

鈴木 邦成氏(すずき・くにのり)

鈴木邦成 物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。

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