第46回:グローバル拠点としての香港

連載トップへ

第46回:グローバル拠点としての香港

2005年9月25日

 97年の中国への返還の前後、香港のグローバル物流システムは大きく揺れていた。香港の返還後のアジア情勢があまりにも不透明に感じられたからである。「アジアには新しいグローバル物流拠点が必要」という見方も強くなっていった。
 それゆえ当時、香港当局は国際的な不安を打ち消すのに必死にならざるを得なかった。
香港は98年に世界有数の規模の巨大IT化ハブ空港(香港新国際空港)を開港した。その結果、関空のおよそ2倍の年間貨物取扱量が可能となったわけである。


 さらに香港島と九竜半島のあいだに広がるビクトリア港の埋め立て計画も推進された。
香港のビクトリア港は水深があり、南に風をさえぎる山々がそびえている。自然港としては申し分のない条件を満たしていた。しかし、海岸に平地が少ないことが欠点となっていた。「その欠点を補い、完ぺきに近い近代貿易港に進化させるには埋め立てが不可欠」という声が出ていたのだ。  また香港返還でシンガポールへの拠点シフトを進行中だった華僑や欧米資本の動きを牽制するという思惑もあった。
ところが香港の地元マスコミにより、「ビクトリア港の埋め立てで同港の幅が狭くなり、船舶どうしの衝突事故が相次いだ」ということが報道された。さらには埋め立てによる大気汚染の深刻化なども指摘された。
 結局、さまざまなマイナス要因が多層的に重なり、香港は「アジア最大の物流センター」としてのステータスを失うこととなった。アジアトップのグローバル物流拠点の地位をシンガポールに譲り渡すことになったのだ。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

鈴木 邦成氏(すずき・くにのり)

鈴木邦成 物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。

関連書籍のご案内

GoogleAD