第16回:部分最適と全体最適

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第16回:部分最適と全体最適

2005年2月27日

 SCMの基本コンセプトに「全体最適」がある。「全体を巨視的に見てその状態をベストにする」ということだ。
これに対して、「部分最適」という考え方もある。「ある特定のプロセスを最高の状態にすること」だ。
だがSCMでは部分最適の和が必ずしも全体最適になるわけではない。ただし、この考え方はこれまでの常識とは大きく異なるかもしれない。「あらゆる部門がそれぞれのベストを尽くせば、それが全体にとってもベスト」と考えるのが普通だからである。だがSCMではこれまでのそうした常識は覆されることになる。「全ての部門が部分最適を追求するとサプライチェーン全体のバランスが逆に崩れてしまう」と考えられるわけだ。


 パソコンを例にとって考えてみよう。パソコンメーカーはできるだけ多くのパソコンを生産することを望む。生産コストを安くあげるためだ。一方、販売店はできるだけ少量ずつ仕入れようとする。在庫が過剰になることを防ぎたいからだ。双方の部分最適を完全に尊重することは不可能だ。どちらもある程度、歩み寄らなければならない。すなわち、「ウィン・ウィンの関係」を構築することで全体最適が実現できるのだ。「サプライチェーンのムリのないプラスの循環が計り知れないメリットを及ぼす」と考えてもいいだろう。例えば、下請け企業を締め上げることでコスト減を図ることはできる。だがそれではSCMでいう全体最適を実現しているとはいえない。「大手メーカーが無在庫の生産システムを実現したが、一方で下請けには在庫の山」―。
こうしたケースも全体最適とはいえないわけである。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

鈴木 邦成氏(すずき・くにのり)

鈴木邦成 物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。

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