第159回:世界物流メガ企業の構想力と実行力

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第159回:世界物流メガ企業の構想力と実行力

2008年3月14日

 近年、日本の大手物流企業も相次ぐ日本メーカーの海外進出を契機に国際化を進めている。一例を挙げるとヤマト運輸、佐川急便、日本通運の宅配便大手三社は台湾、中国などを中心に物流サービス拠点の構築、整備を進めている。

 日本式宅配便事業がアジアでも広がりつつあるわけだ。しかし、ドイツポストなどの欧米の物流メガ企業の国際戦略の構想力と実行力は、日本の物流企業のそれをはるかにしのぐ。ドイツポストグループはアジア各地に主要拠点を設け、「毎年10%ずつ成長する」(国際物流専門筋)といわれるアジアの国際宅配便市場のマーケットリーダーを目指している。

 当然、中国や日本は重点市場との位置付けで力の入れ方が違う。

 日本を含むアジア市場が魅力!

 中国でも物流網の強化が進み、ドイツポスト傘下の国際宅配便大手「DHL」は、中国・上海の外高橋物流園区に最新鋭のロジスティクスセンターを開設。

 同センターの総合的な機能を活用すれば、日本と中国の航空貨物輸送を考えた場合、従来の香港経由などに比べると大幅な輸送コスト削減が可能になるという。

 ちなみにDHLはこの数年間で、米ドルベースで総額3億1500万㌦の投資をしている。しかも今後数年間で2000万㌦の追加投資を行う予定だ。

 その目的は中国におけるマーケットリーダーの地位と、それにふさわしい物流ネットワークの強化などが目的である。物流実務や理論に明るい現地の人材育成にも力を入れていく方針も打ち出している。

 さらにアジア太平洋戦略の一環として今秋、タイにオープンしたアジア最大規模の巨大ハブ空港「スワナプーム空港」にも国際物流拠点「DHLエクスプレス・バンコクハブ」を2200万米㌦を投資して開設している。これにより年間600万個以上の貨物処理が可能になった。
 


 もちろん、ドイツポストグループは日本市場への進出についても着々と基盤強化を進めている。すでに日本の物流規制緩和の流れに乗り、国際ダイレクトメール配送などを中心に日本市場にも参入している。

 昨秋には中部国際空港・香港国際空港間の輸送能力拡大と同区間の翌日配達システムの強化を発表。DHLが株式の40%、キャセイパシフィックが60%を所有するジョイントベンチャー企業「AHKホンコンリミテッド(エアホンコン)」が週10便の航空貨物輸送を行い、香港・名古屋の国際貨物取扱能力を従来の二倍に高めるという。

 名古屋市内の国際宅配便の配達もこれまで以上に迅速化され、午前中の配達が可能となるという。

 今後、首都圏や阪神圏と海外を結ぶ物流ネットワークのさらなる強化、迅速化にも乗り出すことは間違いない。またフェデラルエクスプレス(フェデックス)も昨秋、同社のアジア太平洋地域で最大となる施設(新砂営業所)を「プロロジスパーク東京Ⅱ」内に開設。

 新施設では400人以上の従業員が勤務予定で、同社の首都圏における主要機能の移転と統合が図られる。

 このように、欧米の物流メガ企業は日本を含むアジアの宅配便市場、3PL市場などへの本格参戦を狙っているが、日本側の対応は後手に回っている。

 中国でも中国郵政「チャイナポスト」の小包市場シェアは、グローバル・インテグレーターなどに食われて40%台まで落ち込んでいる。アジアの物流市場全域が欧米の「物流ビッグ4」の草刈場となりつつある。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

鈴木 邦成氏(すずき・くにのり)

鈴木邦成 物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。

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