第158回:世界物流を握る欧米巨大企業の出現

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第158回:世界物流を握る欧米巨大企業の出現

2008年3月 7日

 物流ビジネスのグローバル化の流れのなかで、欧米の「グローバル・インテグレーター」(物流メガ企業)が日本を含むアジア市場への攻勢を強めている。欧米では近年、相次ぐ規制緩和や物流情報システムの発達などの影響で、国際ビジネスの成否を握る鍵として「物流」が大きな意味を持つようになってきている。だが、この分野で日本は大きく出遅れている。

 攻勢を強める外資系物流企業

 小泉純一郎前首相の「郵政民営化解散」により、郵政民営化への足場がようやく固まり、日本郵政公社が巨大な郵便・物流企業として始動するロードマップは出来上がっている。

 しかし、本格的な活躍には相当の時間がかかりそうである。だが欧州などは、すでに郵政民営化、郵便自由化が実現し、その結果、グローバルネットワークを構築した旧国営郵便事業体が郵便事業だけではなく、国際宅配便事業や3PL事業にも乗り出している。

 欧州でいち早く郵政民営化を実現したドイツポストは、M&Aを繰り返しながら物流部門を強化し、世界最大規模の228か国に郵便・物流ネットワークを持つ「グローバル・インテグレーター」に成長している。

 現在、郵便事業にエクスプレス事業、ロジスティクス(3PL)事業に、金融サービス事業を加えた連結年間売上高は2007年には8兆円近い規模に達する見込みだ。

 また、オランダ郵政を母体とするTNTなど、欧州のその他の旧国営郵便事業体もワールドワイドの郵便・物流ネットワークを整備し、経済のグローバル化に適合したかたちでの事業拡大を進めている。

 他方、米国においても、ここ10年ほど物流規制の緩和が続き、それに呼応するかたちでフェデラルエクスプレス(フェデックス)、UPSといった世界物流メガ企業が、ワールドワイドで事業拡大を進めている。

 米国の場合、米国郵政公社の民営化は独占禁止法が大きなネックになっている。
 


 その一方で、民間企業が郵便と物流の融合を視野に入れた事業戦略を展開し始めている。米国の物流メガ企業は本職の宅配便事業に加え、ロジスティクス事業の強化、さらに自社ポストを設置するなど将来の郵便自由化への土台作りにも乗り出している。

 むろん、フェデックスやUPSも欧州の旧国営郵便事業体と同様に全世界に宅配便・物流ネットワークを有している。

 結局、欧米の物流メガ企業が欧米はもとより、世界各国の物流市場で熾烈な競争を展開するという構図が出来上がってしまったのである。

 グローバル化の進む経済環境のなかで、外資系物流メガ企業のグローバル物流ネットワークが世界標準を獲得しつつあるといってもいいだろう。

 そして日本の物流企業がグローバル物流の主導権を握れず、「蚊帳の外」に置かれる危険性も出てきているのである。

 国際ネットワークの充実が課題!

 日本の物流サービスは諸外国と比べても高いレベルにある。だが日本の最大の弱点はワールドワイドでのビジネス展開の下地が乏しいということにある。

 物流情報システムの英語対応力や海外拠点の顧客サービスなどにおいて、世界各国に緻密な物流拠点を持つ欧米の物流メガ企業に伍していける、綿密で広範なグローバルネットワークを持つ物流企業は現時点では日本には存在しない。

 国際宅配便・グローバル企業物流などについてはドイツポスト、TNT、フェデックス、UPSの「物流ビッグ4」に大きな遅れを取っているわけである。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

鈴木 邦成氏(すずき・くにのり)

鈴木邦成 物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。

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