第106回:残業代問題に対応する給与制度

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第106回:残業代問題に対応する給与制度

2017年5月25日

 賃金の支払いについて問題を抱えている社長は多く、特に残業代の支払いについて多くの相談を受けます。それは、社員にある程度長い時間働いてもらわなければ利益が上がらず、かといって運賃の関係から払える賃金には限りがあるといった運送業のジレンマを感じているからです。


 社長の中には、労働者を採用する際に月給30万円としたなら、その給与には残業代も含めて総額30万円と考えている方も多くいらっしゃいます。しかし、法律通りにいけば、社長の考えとは裏腹に残業代を別途支払わなければなりません。残業代は法律上2年間さかのぼって請求することが可能なので、社長が把握していない何百万円という未払い残業代が、ある時点で急に表面化する可能性があるのです。


 では、現在支払っている賃金の範囲で、残業代問題を解決できる方法はないのでしょうか。実は残業代問題を解決する効果的な対策が一つあります。それは、毎月一定額を残業代としてあらかじめ支払う「定額残業制(みなし残業制)」を活用することです。一般的に残業が発生した場合、1.25の割り増しを掛けて残業代を別途支払わなければなりません。しかし、この定額残業制では毎月一定の残業が見込まれることを想定し、一定時間分の残業代をあらかじめ給与に組み込んで支払う制度になります。


 例えば、定額残業制であらかじめ30時間分の残業代の設定を行えば、30時間までは残業をしても、すでに支給済みなので、別途残業代を支払わなくても問題ありません。仮に残業時間が50時間になったら20時間分の差額の残業代を別途支払えばいいのです。逆に30時間と設定したけど、20時間しか残業しなかったら10時間分の残業代を減額しないのも、この制度の重要なポイントになります。


 この定額残業制の導入に際しては、労働者の同意が必要であることなど、形式上、運用上注意する点が多くあります。次回から数回にわたってこの定額残業制の運用方法について詳しくご案内していきます。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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