第83回:労災事故に対する備え

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第83回:労災事故に対する備え

2016年7月14日

 ここ数年、過労死で労災認定を受けた業種のトップは運輸業でした。しかも、割合は全体の3割を占めるほど多くなっております。


 運輸業の現場は、他業種と比較すると長時間労働になる傾向があります。それは長距離移動でずっと運転を行っていることが多く、ある意味、仕方のないことなのかもしれません。しかし、この事実を運輸業の経営者の方に話すと、「ウチは今まで社員が不調を訴えたことがないから、ウチに限っては大丈夫」との声も聞きます。それでは仮に、長時間労働による過労死が発生した場合、どうなるのでしょうか。


 よく経営者の方は、政府労災保険に加入しているから問題ないと言います。確かに、政府労災保険の範囲内で解決できれば問題ないでしょうが、遺族が会社の責任を追及して訴訟すれば、会社が負担する金額は大きくなります。ケースによっては賠償金として、数千万円もしくは1億円超の金額を支払うこともあります。


 その場合、政府労災保険からどれくらいの金額が支給されるかといえば、一時金としておおよそ日額の1000日分と言われています。つまり、給与30万円の方なら1000万円は支給されますが、それ以上の賠償金は会社で用意しなければなりません。数千万円のお金をすぐに用意できる会社は少ないのではないでしょうか。


 こういった事態に備える方法として、民間の保険会社は政府労災保険の上乗せとして「労災総合保険」という商品を販売しており、このような保険に運輸業の会社こそ加入すべきだと考えます。


 この保険は、万一事故が起こり労災認定されれば一定額の一時金が支払われ、さらに、訴訟に発展し会社の賠償責任を問われた場合には、賠償額を追加で支払う保険になります。年々賠償額が高額化しているので、賠償責任の保険金額としては、最低でも1億円以上で加入することをお勧めします。この保険に加入することにより、会社は過労死が発生して高額の賠償責任が発生しても、賠償金を用意することが出来るのです。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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