第81回:賃金仮払いの仮処分

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第81回:賃金仮払いの仮処分

2016年6月16日

 これまで解雇や退職にまつわるトラブルについて、いろいろお話してきましたが、あと一つ付け加えておきたいトラブルが「賃金仮払いの仮処分」についてです。退職した、あるいは解雇した元社員が「退職ではなく解雇だ」「解雇は不当だ」と主張し、解雇の無効と復職を求めて裁判を起こした場合に起こるトラブルです。


 解雇無効を争う裁判では、判決が出るまでに1年前後かかります。元社員はその間の生活費を確保するために、裁判を起こす前に「賃金仮払いの仮処分」を裁判所に申し立てることがあります。裁判所がこの仮処分を認めると、会社は社員に対して裁判中も「仮に」賃金を支払い続けなければなりません。


 判決が出て解雇が有効とされれば、会社が支払った仮払金は返還してもらえます。しかし、その仮払金はすでに生活費として使われ、返還が不可能となり、事実上返還されないことが多くあります。また、解雇が無効だとされれば、さらに「解雇日」までさかのぼって仮払金とは別に、本来の賃金を支払わなければなりません。つまり、賃金の二重払いを強いられてしまうのです。


 このように、「賃金仮払いの仮処分」が認められれば、判決の結果にかかわらず多くの金銭が出ていくことを覚悟しなければなりません。仮処分が出た場合は、会社は和解も視野に入れて早急に解決する策を検討するべきでしょう。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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