第75回:解雇無効の裁判に支払う代償

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第75回:解雇無効の裁判に支払う代償

2016年3月25日

 退職にまつわるトラブルは、社員の在職中には起こらず、たいてい退職した後に起こります。代表的なケースは、退職後に「『自己都合退職』ではなく、『解雇』だ」と訴えてくるケースです。退職金が出ない会社も多い昨今、会社都合の解雇を主張することで、慰謝料や解決金を得るのが目的であるようです。また、退職後に未払い残業代を請求するケースや、ケガや病気を理由に退職した後に労災認定を請求してくるケースもよくあります。在社時よりは、辞めた後の方が言いたいことを言いやすいからなのでしょう。


 解雇した元社員が弁護士や労働組合を伴って解雇無効を訴えてきたときは用心する必要があります。相手はその道のプロなので解雇のハードルは高く、「勝算あり」とみて訴えてきた可能性が高いからです。


 本裁判になると期間はだいたい半年から1年と長期におよびます。そして「解雇は無効」との判決が出たら、裁判所は「労働者の地位があったのに、会社は働かせなかった」として会社に解雇日以降の賃金の支払いを命じます。


 例えば、解雇から2か月後に元社員が解雇を無効とする訴えを起こし、1年後に解雇無効の判決が出たとしたら、その時点で会社側が支払わなければならない賃金は2か月+12か月=14か月分にもなるのです。1か月の賃金が仮に40万円とすると、560万円にもなります。それに弁護士費用もプラスされますし、判決後、やはりその社員に辞めてもらいたければ、そのための解決金を上乗せして支払う必要があります。


 会社都合の解雇を主張してくるトラブルでは、「退職届」があるかないかが勝負の分かれ目になります。要点を押さえた退職届を提出してもらっていれば、自己都合退職がほぼ認められます。退職前に懸念事項がある場合は、社員と話し合い、合意書締結などを行って懸念を解決しておきましょう。


 そうすることで、慰謝料を請求してくるようなトラブルはある程度、未然に防ぐことができます。人のいい経営者ほど訴えられやすいものです。退職後も気を抜かずに、証拠書類を残しておくことが大切です。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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