第120回:退職の合意方法を確実に

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第120回:退職の合意方法を確実に

2017年11月30日

 前回は、雇用契約の始まりについてお話させて頂きました。では、雇用契約の終わりはいつでしょうか。これは簡単かもしれません。退職日です。契約期間が定められている場合は、契約期間の満了時です。期間に定めのない正社員の場合は、定年退職時になります。または、イレギュラーとしてで、雇用契約期間の途中で雇用契約が終了することもあります。社員側の都合によって終了することもあれば、会社側の意思で終了させることもあります。


 社員側の都合によって終了する場合、トラブルになりやすいのが、退職の合意を口頭でした場合です。例えば、社員から途中で退職したい旨の申し出があった場合、会社が合意すれば退職自体は成立します。また、会社が合意しなかったとしても、社員の意思表示から2週間経てば退職は成立します。ただ、このように口頭で合意しただけだと、後から「実は解雇された」などと元社員が訴えてくるケースが多いのです。


 こういった事態を防ぐためには、社員からの退職の意思表示が書面で残る退職届を提出してもらうのがベストです。退職日、氏名等必要項目の欄を設けておき、社員自身に記入してもらってから受け取るのです。退職は社員からの申し出に対して、会社の承諾権限を持つ者が承諾の意思表示をした時点で成立します。承諾権限を持つ者とは中小企業では一般的に社長です。従って、社員からの退職届を社長が受理すれば退職が成立し、後から解雇だと言われる心配もなくなります。


 とはいえ、退職届の提出を求めるのが難しい場合もあります。口頭での意思表示のみの場合、後々やっぱり退職を取り消すという社員も出てくるかもしれません。会社としてみれば、すでに代わりの社員の採用を行っている、一度退職を表明した社員が残り、まわりの士気を下げるなど、望ましいことではありません。このような事態を避けるため、社員から口頭での退職の申し出があった場合、退職を承諾した証しとして、「退職承認通知書」を通知するのがよいでしょう。退職承認通知書には退職の意思表示があったこと、退職日、退職理由や最終出勤日などを記載しておきます。退職承認通知書を通知することで、退職を成立させておくのです。一旦退職が合意された後であれば、撤回は認められにくくなります。


 社員の退職時には、まずは「退職届」を取り付けることが重要です。取り付けが難しい場合でも、口頭の申し出があれば「退職承認通知書」を通知しておく必要があります。退職を確定させておくことがトラブル予防につながるのです。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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