第113回:雇用契約書の取り交わし

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第113回:雇用契約書の取り交わし

2017年8月24日

 経営者の皆さんは社員を採用する際、採用条件を口約束のみで済ませているということはないでしょうか。確かに、雇用契約は口約束で成立します。ただし、労基法で、採用する社員に対して書面で明示しなければならない事項が定められています。この明示事項は最低限を「書面通知」すればいいことになっており、最近はインターネットなどで手に入るサンプルの労働条件通知書を使う会社も増えています。通知書の中の記載項目を埋め、採用する社員に渡すだけで済ませるのです。ただ、このやり方はお勧めできません。例えば、数千万円の不動産を購入する際に、一方的に条件を通知されただけで契約するでしょうか。人の採用も、「年収×勤続年数」で考えると相当な金額の買い物です。当然、労働条件通知書を交付するだけでは問題が残ります。


 まず、「通知」という形式が危険です。雇用契約の内容について労使間でトラブルになったとき、会社が通知した契約内容について労働者が理解し、合意したかどうかは裁判所も判断のポイントになります。合意がなかったとなれば、労働者の主張が認められやすくなります。例えば、「通知書はもらいましたが、内容をよく確認していませんでした」と言われたり、極端な話では、書面をポイと捨てられて「通知書自体もらっていません」と主張されることもあるのです。採用の際は、お互いが記名・押印した「雇用契約書」を書面で残しておくことをお勧めします。お互いが署名した「雇用契約書」を1部ずつ持つことで、雇用条件を聞いていないというトラブルを防ぐことができるのです。


 また、「うちは雇用契約書を取り交わしている」という会社でも、よくよく聞いてみると、簡単な労働条件を示しただけの文書1枚という会社もあります。せっかく社員と契約を取り交わすのであれば、定められた労働条件に加えて、これは必ず目を通しておいて欲しいという重要な事項を盛り込んでおきましょう。具体的には、順守事項、服務規律などを就業規則から抜粋して記載しておくのです。社員に守ってもらいたい事項を採用時に書面で渡しておき、周知させておくことが重要です。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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