第112回:労基署と運輸支局、厳しくなる調査

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第112回:労基署と運輸支局、厳しくなる調査

2017年8月10日

 近年、企業コンプライアンス(法令順守)を重視する流れは、厳しくなっていく一方です。運送業界も、もちろん例外ではありません。労基署の管轄でいえば、長時間労働、未払い残業代など労働条件に関わる違反の取り締まりが厳しくなっています。また、社員が自身の労働条件についての違法性を申告する事例も増え、会社に労基署の調査が入るケースも多発しています。


 厳しい流れは、運輸支局の監査も同様です。監査の対象は、改善基準違反、アルコールチェック、健康状況の把握、点呼未実施などがあり、軽微な違反は「警告」「休車」、悪質な場合は「事業停止」「許可取り消し」と、経営に重大な影響を与えてしまいます。また、処分は会社名を公表して行われるため、荷主への心象が悪くなるといった状況も考えられます。さらに、昨年は「荷主勧告制度」という荷主への是正措置勧告がとられたケースもありました。近年ニュースにもなった大型トラックの事故や高速バスの事故の要因に、こうした違反状況の蔓延があり、その改善に力を入れているためと考えられます。


 そして、労基署と運輸支局、両者の連携も強まっています。平成26年度では、運輸支局から労基署への通報が312件、労基署から運輸支局への通報が864件行われています。会社に対して労基署が労働法違反を調査するとともに改善基準違反を運輸支局に通報して、直後に運輸支局が監査に入るという流れは、ほぼ通例となっているようです。


 両行政機関が確認する違反の基準と、処分の内容はまったく別のものですが、この通報制度が多用されている状況からも分かるように、片方に違反がある事業者はもう一方も違反しているケースが少なくありません。会社はより適切な管理を行い、「労働法」「改善基準」の順守に取り組んでいくことが重要な課題となっています。


 そして、こうした調査・監査を受けた際は、決して隠し事をしないことを強くおすすめします。どちらの行政機関も、綿密な下調べを行い、ほぼ事実を把握してから調査・監査に入ります。嘘や隠し事は「悪質」と判断され、より重い処分を受ける要因ともなりえます。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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