第109回:不明確な手当の整理

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第109回:不明確な手当の整理

2017年6月29日

 会社の給与の見直しを行うとき、まず我々は現状の給与体系を確認するために、賃金台帳を見せてもらいます。運送業はほかの業種に比べて手当の種類が多くなる傾向があります。そのときに、社長でさえ支給理由がはっきりと説明できない手当が何個かあることが多いのです。例えば「長距離手当」「荷下ろし手当」「横待ち手当」などの支給基準を聞いても、何となくは分かるけど何キロ以上、荷下ろしはどこから見るのかなど明確な支給基準までは曖昧である社長が多いのです。


 以前は、運ぶ物の難易度や運ぶ距離、技術力などへの見返りとして、それぞれ手当があてがわれていました。確かに、手当が多い会社は、社員の能力やがんばり・成果、家庭環境などをくんで評価していると言えなくもありません。しかし、皆さんの会社でも支給理由がはっきりと説明できない手当がないでしょうか。不透明な手当があることで、社員が「なんとなくごまかされているな」と感じるようだと逆効果です。


 手当の見直しを図るなら、「家族手当」や「住宅手当」は廃止の候補筆頭に挙げられるでしょう。家族がいる、家賃がかかるというだけで給料が増えるのは、仕事ができる社員の納得を得られるでしょうか。仕事本来への対価としての給料を今一度、見直してみてください。ドライバーはやはり、稼いだ分の給料をもらうことで満足度が向上するものです。


 それに、これからは単に長距離を走る、大型車に乗る、というだけでなく、荷主との良好な関係を築く、有用な情報を入手してくる、新たな仕事をとってくる、なども評価したい項目となるのではないでしょうか。このような成果の評価は手当よりも「出来高給」のほうがなじむことがあります。手当の代わりに「出来高給」で給料を支払うという仕組みを作っても良いわけです。給与体系がシンプルになり、評価の仕組みが社員にも明確であれば、「仕事ができれば給料が増える」ということが実感でき、やる気も生まれるでしょう。このように手当の見直しによって生じた予算は、賞与や出来高給など「結果の対価」としての支払いに振り分けるといいでしょう。


 手当をシンプルにすることで、会社が評価したい項目が明確に伝わるようになります。お金に名前を書けないとは言いますが、メッセージを込めることはできるのです。手当が多いことに、それほどのメリットは感じられない会社は一度、すべての手当を精査し、本当に必要だと思える手当を選り分けてみることも必要ではないでしょうか。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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