第108回:定額残業代として認められない手当

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第108回:定額残業代として認められない手当

2017年6月15日

 前回まで定額残業制の導入について注意する事項をご案内しました。実際、定額残業制を導入しているという運送業者も多いのではないでしょうか。そのような会社は、定額残業代にしている給与が適切かどうかを見直してみる必要があります。どんな給与も定額残業代にできるわけではないからです。


 通常の残業代は、そもそも時間外労働や休日労働をした時間など労働時間に対して支払うものですから、定額残業代にしてよい給与も、同様に労働時間に関連する性質の給与となります。反対に労働時間との関連がない給与は定額残業代とは認められないことになります。一般的に「歩合給」「皆勤手当」「住宅手当」「家族手当」「通勤手当」などは労働時間との関連性は低く、認められません。


 また、運送業界特有の手当のなかで、定額残業代にすることができる手当はあるのでしょうか。例を挙げて考えてみましょう。「無事故手当」は、事故を起こさないことと労働時間との関連は低いでしょうし、「長距離手当」は通常は時間ではなく「運行距離」に応じて支払っています。「乗務手当」は、「乗車する車両」によって支払うのが一般的で、労働時間との関連はありません。「荷下ろし手当」も、荷下ろしした時間に対して支払うと主張できなくもありませんが、通常は「荷下ろしした量」に応じて支払うと考えます。こう見ていくと、労働時間との関連が明らかな手当というのは少ないのではないでしょうか。


 仮に「労働時間」に応じて支払っていると主張したい手当があっても、思っているだけではいけません。就業規則に「○○の時間に対して支払う手当である」などと明記する必要がありますし、手当の実態も時間に関連する手当でないといけません。


 また、手当の名称から労働時間とは関係ないと類推され、定額残業代と認められない可能性もあります。では、どうすればいいのでしょうか。おすすめしたいのは、定額残業代だと一目でわかる手当名に変更することです。たとえば「定額割増手当」などの名称にすれば、誰の目にも残業代であることは明らかになります。「名は体を表す」のです。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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