第107回:定額残業制の運用方法について(1)

連載トップへ

第107回:定額残業制の運用方法について(1)

2017年6月 1日

 前回は定額残業制の概要についてご案内しましたが、今回は定額残業制を導入する上での形式上の注意点をご案内します。


 残業代をあらかじめ固定的な給与として支払う定額残業制ですが、今から導入する場合は、会社の一方的な変更で導入することはできません。定額残業制の導入に伴い時間外割り増しの単価が変更(減額)となり、社員にとっては不利益な変更になります。そして労働契約法の定めにより、同意のない不利益な労働条件の変更は無効になってしまいます。


 そのため、定額残業制を導入するには各社員の個別同意が必要となります。同意は口頭でも可能ですが、後々言った言わないの口論になることを避けるためにも、口頭ではなく、書面化することをお勧めします。ちなみに当社では、雇用契約書を締結することをお勧めします。


 雇用契約書には、定額残業制を導入し、どの部分が割増賃金に該当するかを記載します。重要なポイントは「○○手当は、時間外割り増しとして支給します」と明確に記載することです。併せて、給与規程にも定額残業制を導入する旨の記載が必要となります。


 また、各書式に記載する手当の名称は同一である必要があります。具体的には「給与規程」「雇用契約書」「給与明細書」の三つの書式に、同一名称の記載がないと定額残業制を否定される可能性があるのです。例えば、給与規程と雇用契約書には、手当の名称として『定額残業手当』と記載していたが、給与明細書には、基本給としか記載されていなければ否定されてしまいます。


 定額残業制を導入する場合には、給与規定、雇用契約書に定額残業制導入について記載があるのか、三つの書式に記載されている手当の名称が同一であるかを確認する必要があるのです。次回は、定額残業制の運用上の注意点についてご案内していきます。


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

GoogleAD