第104回:避けて通れない運送会社の労働時間管理

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第104回:避けて通れない運送会社の労働時間管理

2017年5月 1日

【質問】従業員の労働時間管理が必要なことは知っていますが、ドライバーに出庫時間や休憩などを本人の自主性に任せているため、労働時間を正確に管理することが困難です。他社はどのように労働時間を管理しているのでしょうか?


 私は現在、1週間に3社から5社程度の頻度で運送会社からの経営相談に応じており、30年間に相談を受けた運送会社は全国で膨大な数になります。私が見てきた運送会社のうち、ドライバーの労働時間管理が十分行われている会社は残念ながら少数です。私の経験では、労働時間管理をしっかりと実施している会社は1割程度。最初から「ドライバーの時間管理は困難」と管理自体をあきらめている会社が3割程度。残りの6割程度が「時間管理は必要」と認識しながら、なかなかうまく出来ないとジレンマを抱えている会社です。


 一方で、最近の労務トラブル発生件数は急速に増加しています。トラブル発生後の人事賃金制度見直しに関する運送会社からの相談が連日のように寄せられる状況です。ひとたび労務トラブルが発生すると、労働時間管理がなされていない会社はお手上げ状態です。訴えた社員の主張がそのまま通り、会社は抗弁すら出来ません。従前のあいまいな時間管理が通用した時代は終焉し、労働時間管理をしていない会社は、裸で戦場を歩いている無防備な状態といえます。


 管理が困難な理由として運送会社からよく聞く内容は、①休憩時間の実態把握が困難(背景にはデジタコのボタン押し忘れ、もしくは休憩を待機で入力する例などがある)②荷待ち時間短縮のため、早めに出庫するドライバーが多く、その事情が分かっている会社側としては黙認せざるを得ない③長時間労働の解消がすぐには困難であるなど様々です。実際に労働時間を管理している会社はどうしているかといえば、やはりデジタコを活用している会社が多いといえます。勤怠管理や給与管理などの労務管理ソフトと連携して管理しており、休憩ボタンの押し忘れを運行管理者がこまめにチェックして指導しています。出庫前、帰庫後の点検、点呼、洗車などの作業時間については日報で管理するか、もしくは標準所要時間を労使間で話し合い、取り決めている会社もあります。事務員や倉庫作業員はタイムカードで管理していますが、ドライバーの時間管理にタイムカードを使っている会社はごく少数です。なお、長時間労働抑制のため、「残業申告書」による許可制を導入し、労働時間短縮に効果を挙げている運送会社もあります。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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