第104回:「名ばかり管理職」の落とし穴

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第104回:「名ばかり管理職」の落とし穴

2017年4月27日

 皆さんは「名ばかり管理職」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。十分な権限や報酬が与えられているわけではないのに、肩書きだけが与えられている社員のことを指し、総じて残業代の支払いが行われていません。


 運送業の場合、運行管理者・所長など、リーダー格の社員を管理職として扱い、残業代を支払わないという会社も多いのですが、これは本当に認められるのでしょうか。


 確かに労働基準法には「労働時間、休憩及び休日に関するルール(残業代の支給など)は、監督若しくは管理の地位にある者に対しては適用しなくよい」という趣旨の条文があります。この部分を解釈して「運行管理者・所長=残業代を支払わなくてよい社員」としているのです。


 しかし、前提として知っておきたいのは、会社のいわゆる「管理職」と労働基準法上の「管理監督者」は違うということです。会社では、部下を管理・監督する立場にある役職を総称して「管理職」といいます。対して、労働基準法上の「管理監督者」は、経営者と一体的な立場にあり、社員の採用・解雇、人事などの重要な権限を任されている者をいいます。また、その地位に見合った十分な報酬があり、労働時間管理を自分の裁量で行うこともできます。そのため、欠勤や遅刻・早退をしても賃金控除を行うことはありません。中小の運送会社では、名前は「管理職」であっても、実態は「管理監督者」ではない者がほとんどです。中小企業で労働基準法上の「管理監督者」の条件に当てはまる者を厳密に求めると恐らくそれは「役員」となってしまうのです。


 このため、運行管理者・所長からこれまで支払っていなかった残業代を請求される恐れがあるのです。実際、「名ばかり管理職」だったとして、運行管理者・所長から未払い残業代を請求されるトラブルが近年、頻繁に発生しています。現在の「管理職」の働き方や処遇を確認し、次のような例に当てはまるようであれば「名ばかり管理職」のリスクが高くなります。待遇面の早急な見直し、もしくは一般社員と同様の残業代対策を行う必要がでてくるのです。


 (1)人事権や経営権などの重要な権限を与えられていない
 (2)労働時間管理に裁量がなく、欠勤・遅刻・早退をすれば、その分給料から減額される
 (3)残業手当が支払われなくなったことで、一般社員より給料が同等または低くなった
 (4)一般社員やパート・アルバイトと同じ仕事、現業的な仕事をしている


(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

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