第1回:民間の労災総合保険へ

連載トップへ

第1回:民間の労災総合保険へ

2013年6月 6日

 少し前の話ですが、2008年の過労死で労災認定を受けた業種のトップは運輸業でした。その割合は全体の3割を占めるほどです。しかし、この事実を運輸業の経営者に話すと、「ウチは大丈夫」「労災に入っているから問題ない」との回答が実に多いことに驚かされます。


 私も年間300社以上の経営者にお会いして人事労務のナマのお話を伺いますが、運輸業の現場は他業種とは比較にならないほど長時間労働が際立っています。

 現在、労基署が過労認定の一つの基準としているのは、残業時間が月100時間を超える場合か、2か月または6か月の平均が80時間を超えた場合です。運輸業でこの基準内で収まっている企業は、私が知る限り、かなり少ないものと思われます。

 仮に、過労が原因で死亡事故が発生した場合、どうなるのでしょうか。ある経営者は「労災保険に入っているから問題ないでしょう」と言います。労災の範囲内で解決できれば問題ないでしょうが、遺族側に弁護士がつけば会社の賠償責任を問われかねません。訴訟となれば、和解金として数千万円から数億円といったケースもあります。

 その場合、労災保険は賠償額から、どれくらい控除できるかと言えば、日額の1000日分と言われています。つまり、給与30万円の方なら1000万円は控除してもらえますが、それ以上の和解金は全て会社で用意しなければなりません。また、自動車保険の搭乗者保険は、乗車中の事故で対応することは可能ですが、荷下ろしの際などは当然対象外となります。

 運輸業者向けの就業規則セミナーでもよく話をしていますが、運輸業者こそ民間の労災総合保険に加入すべきです。この保険は、万一、事故が起こり、労災認定されれば一時金が支払われ、訴訟まで発展し会社の賠償義務を問われた場合には、賠償責任保険で支払うことができる保険です。年々賠償額が高額化しているので、賠償責任の保険金額としては、最低でも1億円以上で加入しましょう。

(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

保険サービスシステム株式会社
馬場 栄氏

馬場栄

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士


年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。

GoogleAD