第49回:人材確保・定着のためのコンプライアンス

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第49回:人材確保・定着のためのコンプライアンス

2015年3月 4日

 このところの運送業界では、以前にも増して人材確保が難しくなってきているようで、仕事を請けてもドライバーが確保できないということで受注機会を失うという運送業者も相当数存在するということをよく耳にします。ドライバー自身に目を向けてみても全体的に高齢化が加速し、若年層のドライバーが多くはないことから絶対数の減少傾向がみられ、人材の奪い合いが必然的に生じています。


 その結果、ドライバーは労働条件のよいところに転職する傾向が強くなり、人材を確保しやすい運送業者に仕事が集中し、過去最高益を更新する事業者も少なからず存在する一方で、人材確保難によって十分に仕事が請けられずに、得意先を他社に奪われてしまったというケースもあるようです。


 そうした中、人材確保のために破格の処遇を用意して人材を確保しようとする企業も見受けられます。しかし、実態に目を向けてみると、実は本来加入をしなければならない健康保険や厚生年金保険といった社会保険に未加入であったりすることも多く、高い賃金支給の背景にはコンプライアンス上の問題を抱えていることがあります。


 そして、多くの賃金を得たいというドライバーの声に応えて雇用をし続けている中で、長時間労働による突然死や過労に伴う大事故によって業務停止処分を受けるということで、事業の存続を危うくさせてしまい、ドライバーへの賃金支払いが遅滞してドライバーの流出によって倒産が決定的になるケースも散見され、改めて人材の定着や確保の重要性を再認識する事業者はかなり存在するものと推測されます。


 結局のところ、一時的なドライバーの確保のためにコンプライアンス違反を犯してしまうと、中長期的な経営が実現できないという負のスパイラルへと陥ることになるわけです。同時に、ドライバー自身にとっても長時間労働を長年継続していると、身体にとってよいわけがなく、治療薬を飲み続けながら運転をするという行為につながり、事故リスク以上に労働継続リスクも抱えてしまいます。以上のことを考えると、コンプライアンスを順守していくということは、中長期的な経営基盤を強化していくという点では重要なことであり、そういった体制を構築しているところでは、結果として、人材の流出が発生し難いことで確保に向けて東奔西走する必要性も小さくなるように思います。


(服部英治、名南コンサルティングネットワーク http://www.meinan.net/

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

名南コンサルティングネットワーク

名南コンサルティングネットワーク

東海地区トップクラスの経営コンサルタント集団。税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、中小企業診断士など様々な資格を活かし、経営コンサルティングだけでなく労務管理、税務会計、各種登記・許認可申請、資産運用助言、ISO認証取得支援、マネジメントシステム構築支援など中小・中堅企業の経営をトータルにサポート。「運送業支援チーム」を結成し、業界特有のトラブル対応やトラブルの未然防止策などの経営支援に力を入れている。

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