第41回:定額残業代運用の注意点

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第41回:定額残業代運用の注意点

2014年11月26日

 このところ、労働基準監督署による調査において、ドライバーの未払い残業代についての指摘を受け、過去に遡及して割増賃金支払いを余儀なくされる運送業者が少なくありません。


 こうした問題を回避するために、最近は、いわゆる定額残業代といわれる制度を導入する企業が増加傾向にあります。例えば、毎月定額で支払う「運送手当」は残業代相当であるとして、別途割増賃金を支払うことなく、定額の手当が1か月間のすべての残業代として扱う運用がみられます。


 ところが、この定額残業代制度を巡ってのトラブルも一方で増加しており、最近の労働裁判例の動向をみていると、事業主側に不利、つまり労働者側に有利な判決が続いておりますので、運用にあたっては注意を払わなければなりません。


 例えば、月額2万円の固定額を残業代相当と設定して支給している一方で、実際の時間外労働が毎月100時間を超過しているのであれば、割増賃金の計算において合わないということになり、こうした場合には制度そのものが否定される可能性があります。そのため、残業代を毎月定額で支給をするのであれば、正しく計算をした額以上の金額に設定する必要があり、また、その支給する手当とは、具体的に何時間分の時間外労働の対価であるのかということを賃金規程などにおいて明記しなければなりません。


 加えて、明記された時間外労働の時間数以上の時間外労働が発生した際に、その超過した時間数に対しての割増賃金の支給が別途にない場合には、賃金支払いにあたっての原則(毎月全額支払わなければならない〈労働基準法第24条〉)に違反することになりますので、これも制度自体が否定される可能性を残すものとして注意しなければなりません。


 以上から、定額残業代制度を導入するのであれば、その根拠となる具体的な時間外労働時間を賃金規程などにおいて明記して、かつその時間を超過した場合には追加で割増賃金を支払う運用が求められますので、本当に定額残業代という制度による運用が自社においてベターな選択肢かどうか十分な検討が必要となります。


(服部英治、名南コンサルティングネットワーク http://www.meinan.net/

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

名南コンサルティングネットワーク

名南コンサルティングネットワーク

東海地区トップクラスの経営コンサルタント集団。税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、中小企業診断士など様々な資格を活かし、経営コンサルティングだけでなく労務管理、税務会計、各種登記・許認可申請、資産運用助言、ISO認証取得支援、マネジメントシステム構築支援など中小・中堅企業の経営をトータルにサポート。「運送業支援チーム」を結成し、業界特有のトラブル対応やトラブルの未然防止策などの経営支援に力を入れている。

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