第34回:安定経営のための株式分散防止策と留意点

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第34回:安定経営のための株式分散防止策と留意点

2014年10月15日

 オーナー系企業や中小企業において株式が分散することは、機動的な経営を阻害する要因であるため、多くの会社が株式の譲渡制限を設け、会社にとって好ましくない株主を排除する体制をとっています。しかし、従前の株主に相続が発生した場合、必然的に経営に関与しない相続人が会社の支配権たる株式を取得することになりますので、相続を発端として経営権争いが起きるなどの問題が生じていました。


 そこで、現行会社法では「株式の相続人等に対する売渡の請求」(以下「相続売渡請求」)という制度を創設し、会社が定款に定めることで、相続などの一般承継によって譲渡制限株式を取得した者から、会社がその株式を強制的に買い取ることを認めました(会社法174条以下)。


 この制度は少数株主の相続に伴い、譲渡制限株式が経営に好ましくない者に分散することを防ぐためのもので、中小企業の事業承継には非常に有意義な制度と考えられたため、会社法施行後にこの制度を定款に追加した会社も少なくありません。


 しかし、この制度には気を付けなければならない点がいくつかあります。まず一つは、株式を買い取る際の価格の問題です。相続売渡請求による株式の売買価格は(1)会社と相続人が協議によって定めることになりますが(177条1項)、この協議が整わない場合、(2)裁判所の決定によることになります(同条2項)。裁判所は、株式の売買価格の決定に際して「株式会社の資産状態その他一切の事情」を考慮しなければならない」とされており(同条3項)、売買価格がいくらになるのか予測するのが困難です。税務上の評価額などを想定していると、予想外に高額になることもあります。


 さらに気を付けなければならないのは、相続売渡請求は少数株主だけではなく、オーナー一族も対象になる可能性があるということです。相続売渡請求の行使を決定するのは株主総会(特別決議)ですが、実はこの株主総会においては、売渡請求の対象になる株式の相続人の議決権は排除されるのです(175条2項)。


 例えば、オーナーが亡くなった場合、オーナーが保有していた株式はもちろん、その相続人が元々保有していた株式も議決権が排除される結果、少数株主のみの株主総会でオーナー家の株式が強制的に会社に買い取られるという、いわば会社の乗っ取りやクーデターの恐れがあるわけです。このような手法は、「法の趣旨に反する」との指摘があり、事前・事後の救済方法が模索されているものの、現実的な解決策はいまだに確立されていない状況です。


 ですので、相続売渡請求の導入を検討している会社や、すでに導入している会社も現在の株主構成を確認し、上記のようなリスクが生じないか検討して、導入のタイミングや規定の仕方を工夫することをおすすめします。


(小谷祥、名南コンサルティングネットワーク http://www.meinan.net/

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

名南コンサルティングネットワーク

名南コンサルティングネットワーク

東海地区トップクラスの経営コンサルタント集団。税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、中小企業診断士など様々な資格を活かし、経営コンサルティングだけでなく労務管理、税務会計、各種登記・許認可申請、資産運用助言、ISO認証取得支援、マネジメントシステム構築支援など中小・中堅企業の経営をトータルにサポート。「運送業支援チーム」を結成し、業界特有のトラブル対応やトラブルの未然防止策などの経営支援に力を入れている。

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