第25回:事業引き継ぎの上手な行い方 その3

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第25回:事業引き継ぎの上手な行い方 その3

2014年6月 9日

 前2回で株主の整理、債務の承継をお話してまいりました。今回は人の承継についての問題です。「人の承継なくして事業の承継なし」。しかし、最大の問題は、人を法律で「縛ることができない」ということです。


 具体的には、事業承継を機に会社をやめたいという従業員などに、会社は労働を強制できないということです。その結果、その従業員などが持つ事業のノウハウが消失することになります。



 顧客についても、退職従業員があえて顧客名簿を持ち出して積極的に売り込めば別ですが、基本的には、顧客が勝手に退職従業員と取引することを防ぐ手立てはありません。


 そのような中でも、第三者による承継、いわゆるM&Aでは、事業を譲渡する人と、事業を譲り受ける人の間で、法律的に「人の承継」を縛ることがあります。例えば、「事業の引き継ぎ後3か月以内の退職者が出たら1人あたり300万円を代金から減額する」などという取り決めをします。


 3か月以内という制限は、それ以上の期間をあけると因果関係がよくわからなくなるという理由からです。また、300万円というのは再度の雇い入れのコストです。役員などの基幹人材であれば、その額は高くなるでしょうし、パートタイマーなどで代替え可能な人材であれば低くなるでしょう。


 このようにして人材を拘束することは、間接的には可能ですが、これはあまり本質的ではありません。事業の引き継ぎ直後から新社長が個別に従業員と面談をしていき、安心とモチベーションを与えること、そしてその新社長の意向を体現できる現場の管理職が常駐してマネジメントをしていくことが重要です。


 これは親族内承継でも同じことではないでしょうか? 前社長のように「あうん」で物事を進められることはないので、きちんとした従業員とのコミュニケーション、そして、それは時に井戸を雪で埋めるように骨の折れる仕事ですが、それこそが「人の承継」の要になるのではないかと思います。


(荻野恭弘、名南コンサルティングネットワーク http://www.meinan.net/

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

名南コンサルティングネットワーク

名南コンサルティングネットワーク

東海地区トップクラスの経営コンサルタント集団。税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、中小企業診断士など様々な資格を活かし、経営コンサルティングだけでなく労務管理、税務会計、各種登記・許認可申請、資産運用助言、ISO認証取得支援、マネジメントシステム構築支援など中小・中堅企業の経営をトータルにサポート。「運送業支援チーム」を結成し、業界特有のトラブル対応やトラブルの未然防止策などの経営支援に力を入れている。

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