第21回:事故発生時の本人への損害賠償

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第21回:事故発生時の本人への損害賠償

2014年4月14日

 運送業ではドライバーの交通事故が大きな心配事となりますが、実際に事故が発生した際、修理費用などを本人に負担させる運用が一般的に行われています。中には、全額負担させるという事業所もありますが、果たして、その運用が妥当かどうかという点を考えると、返ってトラブルの元になるため避けた方がよいでしょう。


 様々な労働裁判例を紐解いてみると、茨城石炭商事事件(最高裁・昭和51年7月8日)では、「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被害者の業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し損害の賠償または求償の請求をすることができるものと解すべきである」と示しており、会社が従業員本人に対して行う損害賠償請求や求償の限度を、損害額の4分の1が限度であるとされました。


 類似の損害賠償に関する裁判例においても、やはり全額賠償を求めることは難しく、一部のみしか負担させることができないという判決が一般的であるため、最大でも損害額の4分の1程度を一つの目安と考えて頂くのが妥当ではないかと思います。


 もちろん、ケースによって様々な背景があるため、徹底した教育を重ねてきたにも関わらず本人が違法行為を行ったことで事故を発生させたのであれば、4分の1を超えて請求をしても問題とはなり難い可能性があります。一方で、ドライバー本人に非がほとんどないということであれば、4分の1という基準であっても負担が大きすぎるということになります。


 企業がドライバーに対して事故の損害額をある程度負担してもらいたいと考えるのであれば、ドライバーに常日頃から十分な安全運転教育を行うと同時に、運行時には無理な運行を強いることなく、適度な休憩を取らせるといった配慮を意識して取り組む必要があります。


(服部英治、名南コンサルティングネットワーク http://www.meinan.net/

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

名南コンサルティングネットワーク

名南コンサルティングネットワーク

東海地区トップクラスの経営コンサルタント集団。税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、中小企業診断士など様々な資格を活かし、経営コンサルティングだけでなく労務管理、税務会計、各種登記・許認可申請、資産運用助言、ISO認証取得支援、マネジメントシステム構築支援など中小・中堅企業の経営をトータルにサポート。「運送業支援チーム」を結成し、業界特有のトラブル対応やトラブルの未然防止策などの経営支援に力を入れている。

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