第97回:人手不足を長時間労働抑制の契機にする

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第97回:人手不足を長時間労働抑制の契機にする

2017年1月29日

【質問】人手不足の影響でドライバーの負担が増しています。長時間労働の抑制が必要とは思いますが、ますます困難になっている気がします。長時間労働抑制のために、どのような取り組みをしていけばよいのでしょうか。


 長時間労働の抑制は運送業界全体の重要課題です。この課題を改善しない限り、運送業界は今後も、若手や女性、未経験者などの採用に苦労し、人手不足の問題解決が困難になります。一方で、人手不足の急速な進行が既存のドライバーをますます忙しくさせ、長時間労働を誘発するというジレンマに陥っています。このとき重要なことは、「優先すべきことは何か」を押さえておくことです。


 今の仕事を従来通り、無難にこなすことを優先すれば、長時間労働に依存せざるを得ません。しかし、「人手不足の効用」(業界にとって悪いことばかりではないという面)に注目すれば、従来の仕事のやり方、荷主との付き合い方を思い切って転換する良い契機にもなります。今どちらを優先すべきか、それは明らかです。転換する少しの勇気と行動力があれば、今ならば実行可能です。


 私はほぼ毎日、全国に出張し、運送会社の生の実態を見ていますが、今は状況が大きく変化しています。20年に一回の大変化だと感じています。荷主の考え方も明らかに変化しています。人手不足は荷主の物流体制維持に対する大きな不安要素になりつつあります。特に、実運送会社と直接関わっている物流子会社の危機感は非常に高まっています。「本気で雇用確保を考えないと危ないかもしれない」と考えています。


 長時間労働抑制のためには、(1)荷主と共同で取り組まないと解決しない問題(2)わが社単独で、ある程度解決できる問題、の二つに分けて取り組む必要があります。長い手待ち時間や荷主都合での待ち時間の変動、荷主の物流センター内設備、決められた荷役作業の手順、着時間の指定、小ロット多頻度配送などに起因する問題は運送事業者だけで解決することはできません。荷主と一緒になって検討し、改善することが必要です。


 一方で、社内システム化や設備の改善、仕事や荷主の選択、労働条件の決め方、シフトの組み方などの問題は会社内で検討し、改善を進めることで、ある程度解決することができます。これをすれば一気に解決できるという簡単な問題ではありませんので、一つひとつ改善を積み重ねるしかありません。人手不足の今こそ、社員の声を聞き、長時間労働抑制に取り組む必要があります。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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