第86回:持ち車制度を解消したい

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第86回:持ち車制度を解消したい

2016年7月28日

【質問】当社は社歴が長く、高齢運転者の中には、いまだに持ち車制度で働いている者がいます。早く解消したいと思っていますが、他の社員と同じ給与体系にすると伝えたところ、「それならば辞める」と言います。人手不足の折、辞められると大変困ります。どうすればよいでしょうか。


 運送業界には昔から、ドライバー個人が実質的に所有する車両を会社の業務に使い、社員と同じように仕事をしてもらう制度が存在しました。持ち車制度や車両リース制度、もしくは個人償却制という名称で呼ばれていたものです。他の社員と同様に運行指示に基づいて働き、運行管理や時間管理をしていますので、完全な名義貸しの状態ではないのですが、中には業務委託契約のケースや社会保険をつけていないケースもあり、この場合は実質的に名義貸しと判断されます。当然ながら名義貸しは違法であり、最も厳しい行政処分の対象となります。


 本来はすでに存在しないはずですが、実態はご質問の会社のように一部の社員に残っているケースがあります。これを早急に解消しなくてはなりません。今後マイナンバー制度が始まれば、今まで先延ばしにしてきた一部の会社も全て実態が明らかになりますので、今年中には完全に解決しなければなりません。


 しかし、本人に賃金体系の話をした段階で抵抗され、辞めると言われることがあります。本人にしたら「入社時にそれで働いてくれと言ったのは会社の方だろう」という気持ちがあります。ただでさえ人手不足で困っているときに躊躇する経営者の気持ちもわかりますが、ここで躊躇しては会社が存続できなくなります。断行するだけです。この場合、双方が納得する解決策としては、当該ドライバーの手取り賃金がなるべく低下しない方法を提案するしかありません。


 いずれにしても、適正な雇用契約と社会保険加入は最低条件として話し合うことになります。移行時点で賃金を多少上げてでも、社会保険に加入してもらいます。また、この種のドライバーはコスト意識が極めて高く、車両管理も大変行き届いていますので、模範的な優良社員になっているケースがあります。この良さを継続してもらうほうが会社にとってもメリットがあります。つまり、コストを節約したら、その分だけ手取りが増えるという、業績給主体の賃金体系を提案することになります。


 他の社員とは異なる体系になりますが、それでコンプライアンスが順守できるならば、2本立ての体系は決して悪くありません。最低賃金をクリアし、売り上げとコストで決定する歩合給と時間外手当の体系を提案し、労働契約を再締結して完全に解決しておきましょう。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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