第84回:採用できる給与水準にするには

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第84回:採用できる給与水準にするには

2016年6月20日

【質問】人手不足が深刻です。採用できないうえに、条件の良い大手企業に人が流れており、当社のような中小企業では給与面で太刀打ちできません。何か策はあるでしょうか。


 このところ、採用や定着に関する相談が急速に増加し、相談の半数以上を占めています。採用できないばかりか、他社へ流出し、どんどん減っているという相談をよく受けます。事業の継続に赤信号が出る状況となり、お会いするほとんどの会社が求人対策に費用を投じています。


 ホームページの求人サイトやスマホ版を新たに追加した会社などをよくみかけます。相談を受けたある運送会社の社長は「採用の費用ばかりでなく、採用しても1か月で辞めてしまう人が多いため、その間の人件費や教育費用などを合わせると、1人当たり180万円掛かっている」と言われます。求職者へアプローチする努力は当然ですが、人を採用するためには、採用できる程度の給与にすることが必要です。日本中が人手不足の時代に、手取り給与10万円余りで採用することは困難です。普通の生活が出来る給与にしないと求職者の選択肢に入りません。


 私が見てきた運送会社では、採用の可否を分ける年収は約400万円です。月額給与30万円、手取りで20万後半が採用できるか否かの最初の境界線です。もちろん、大型運転者とその他では金額に違いがありますが、おおよその目安はそんなものです。


 ところが現在、4トン車で1日に3万円稼げない実態があります。人件費比率は50%を超えると赤字になり、払える給与は売り上げでほぼ決まります。さらに、運転時間などの規制で、働きたいと訴えるドライバーを抑制しなければなりません。多くの経営者がジレンマを抱えています。


 現在の法規制のもとで、給与の源泉となる売り上げや付加価値を上げるためには、車両ごとの効率を上げる方策しかありません。時間のすき間が生じないように仕事を埋めていくこと、車両コストおよび燃料、高速、修繕費などの変動コストを極限まで抑える経営に徹するしかありません。採用できている会社は少ない利益の中で、何とか採用できる人件費を捻出しているのが実態です。採用戦略は求人のアプローチだけでなく、付加価値を上げる改革が必要です。


 今こそ利益構造の再構築に本腰を入れなくてはなりません。荷主に遠慮していた時代は終わり、運賃交渉は原価で正当に行う必要があります。ようやく今は原価の話ができる環境になっているので、実態原価を使って堂々と説明しましょう。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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