第82回:本社部門の賃金体系を見直したい

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第82回:本社部門の賃金体系を見直したい

2016年5月23日

【質問】当社は数年前に実運送部門の大半を別会社化し、傘下の倉庫会社とともにグループ企業として分離しています。本社は物流システムの構築と利用運送を中心とした物流管理会社であり、現業職はごく少数です。一般的な運送会社とは異なるため、主力となる本社部門の賃金体系をどうするか悩んでいます。本社部門の賃金体系について事例があれば教えてください。


 最近、地場中堅の運送会社から本社部門の賃金体系見直しについて相談を受けることが何度かあります。そのうちの1社は優れた提案力で近年急速に業績を伸ばしており、効率的な分社経営の効果も加わり、順調にグループの業績拡大を果たしてきた会社です。今では地元で名の知れた優良企業となり、大学生も毎年3〜4人新卒採用している会社です。提案型の物流企業を目指し3PL事業に力を入れていることから、今後も優秀な若手の人材を確保していきたいと考えています。


 現在、物流業界は人手不足が蔓延していますが、この会社のように求人に苦労していない会社が存在するのも事実です。その会社が今、賃金体系の見直しを検討しています。なぜかというと、若手社員の意識が昔とは様変わりとなり、将来のキャリアプランがしっかり描ける会社を選ぶ傾向があるからです。自分の存在価値が自分で確認でき、自分の貢献度が社内の評価で明確に表れることを期待しています。


 この会社でも、採用した新入社員が数か月で辞めてしまうことがありました。その理由を聞くと「自分の評価が良く分からない」というものでした。会社にしてみれば、業績に関わらず昇給しているのだから不満はないだろうと思っていました。意識のズレが生じていたわけです。


 本社部門の社員は成果がすぐに数字として表れない仕事が多く、毎日数字の結果が把握できる現業部門よりも、さらに仕事のプロセスを一人ひとり見てあげる必要があります。この会社の場合は安定的な賃金体系に重きを置くあまり、評価による個人差をつけず、頑張っても頑張らなくても皆同じという体系になっていました。いわゆる安定重視の固定型賃金でした。今は、給料を高くすれば良い社員が定着するという時代ではありません。一人ひとりのやりがいを高める仕組みが欠かせないのです。


 それでは、本社部門の賃金体系はどのようなものが良いのでしょうか。会社により違いはありますが、この会社のように現業部門を切り離して商社的業態に近い会社の場合は、思い切って流通業的な体系を導入してみるのも一案です。つまり、大手流通業のように明確な等級別賃金テーブルを設定し、目標管理制度と人事考課制度を導入するのです。評価の結果は本人にフィードバックして社員教育に生かす仕組みです。この会社は範囲職能給と役割給の折衷案的な体系を提案し、今秋のスタートを目指して改定を進める予定です。


 ただし、等級制で気をつけなくてはならないのは、運用が決して年功序列にならないよう、等級の数は6等級程度に抑え、仕事の役割が上がらない限り上位に上がらない体系にすることです。従来の職能給テーブルの作り方に拘らず、なるべく標準号俸ピッチを抑え目にして、役割の違いにウェイトを置くことがキーポイントです。また、評価は業務ごとに項目を設定してください。経理の仕事と物流提案の営業職に求める能力は大きく異なり、評価の物差しも違います。同じ評価項目で無理に統一しようとすると、結局、納得感がない形だけの制度に陥ることが多いのです。


 新しい制度を検討するときは、既製の制度を勧める外部専門家に任せるのではなく、自社でPTを作り、自社に合う弾力的な制度を作り上げる方が良いでしょう。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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