第81回:給与体系変更のポイント

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第81回:給与体系変更のポイント

2016年5月 9日

【質問】わが社の給与体系は、基本給と手当に歩合給と残業代を組み合わせています。しかし、良く働いている社員の給与が低く、楽な仕事の社員が高いなど、仕事の貢献度と給与が合っていない気がしています。4月から給与体系を変更したいのですが、変更のポイントについて教えてください。


 運送会社から当方に寄せられる各種相談の中で、給与体系の変更に関する相談は最も多く、変更時期も年度変わりの4月からが大半です。ただし、給与体系の見直しは一部に不利益変更を伴うケースが多いため、会社が一方的に変更できるものではなく、社員への説明や同意を必要とすることから、少なくとも半年前から検討を始めるのが一般的です。変更時期は今春4月にこだわらず、慎重に検討したほうが良いでしょう。


 検討すべき給与体系は幾通りもあり、会社の実態に合わせて決めるべきですが、一般的に運送会社の給与体系変更では次のポイントをしっかり押さえておく必要があります。運送業と他業種との違いに十分注意して進めることが大事です。


 (1)実運送部門を有する運送会社の給与体系は、職務給もしくは職種給が最も適する。体系は運転職、物流センター、事務・管理職などに分けてそれぞれ作る。給与体系を無理に一本化すると、仕事内容の違いが大きいため、処遇にギャップが出て不公平感が生じやすい。


 また、人事考課の結果を基本給に反映して、毎年の昇給額で差をつける他業種の仕組みは運送会社には適さない。基本給テーブルを作って運用する仕組みは運送業には不適である。すでに賃金テーブルを導入している会社の場合は、毎年の昇給ピッチを極力縮めて役割や昇格による昇給にウエートを移すべき。


 運転職から物流センターへの異動や管理職への昇進などにより、モチベーションが下がらないように給与水準のバランスを適正に設定する。諸手当は無意味な手当を極力省き、業務に関連する手当だけに絞る。時間外、深夜、休日などの割増賃金は法定通り不足なく支払う必要あり。よって会社の人件費支払い能力から逆算して、適正な残業単価となるよう検討することも必要。


 (2)歩合給については、導入の可否を会社の考え方に従って判断すれば良い。一般的に、運転職には歩合給を望む人が多い。働いた結果が数字に表れ、わかりやすく、納得できるからである。


 運送業では貨物、旅客ともに定着している貢献度の反映手法である。ただし歩合に過度なウエートをかけないほうが良い。給与の半分までと考える。また算出基準はなるべくシンプルにして複雑にしないほうが良い。社員の量的貢献度の7割程度が歩合給に反映できれば良いと割り切る。


 歩合給を導入する場合は全て一律の歩合レートにせず、業務内容ごとに実態に合わせて検討したほうが良い。これをしないと不公平感が出る。車種や業務により歩合レートを設定する工夫が必要。歩合給を導入しない場合は、仕事の貢献度を正確に反映する評価制度が必須。この場合、客観的な計数評価の項目にウエートをおく。これにより「給与が同じなら頑張っても同じこと」と思わせない仕組みが必要。


 (3)評価制度は、歩合給の有無に関わらず、必ず作る。評価表は職種ごとに作る。評価は必要な項目に絞り、複雑にしないほうが良い。運転職の評価表は、歩合給有りの場合は勤務態度や仕事の質に関する評価項目にウエートをかける。仕事の正確さ、あいさつ、マナー、指示の順守度、事故の有無、車両管理の徹底、整理整頓などを重視する。


 歩合給なしの場合は、計数で客観的に評価できる項目を設定する。出勤日数、売り上げ貢献度、付加価値額、事故や業務ミスの回数と影響度、懲戒の回数などである。いずれの場合も経営者の加点評価を組み込むことで評価の誤差を修正することが可能。評価結果は月例給与の評価手当に反映し、昇進の判断にも活用する。賞与を支払っている会社の場合は賞与額の決定に活用する。評価結果は必ずフィードバックして指導に活用する。


 以上、運送会社の一般的な給与体系のポイントについて記載しましたが、事業の実態に応じて望ましい体系は変化します。また、社員との関係で段階的に導入していくケースもあります。給与体系の変更を検討する場合の一例として参考にしてください。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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