第74回:今、人手不足対策で各社は何をしているか

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第74回:今、人手不足対策で各社は何をしているか

2016年1月31日

【質問】ドライバー不足が深刻です。募集をかけても全く応募がありません。このまま人手不足が続くと、現在の仕事を維持することも困難になります。今、各地の運送会社は実際に、どのような動きをしているのでしょうか?


 人手不足が全国に広がり、深刻さを増しています。当社で実施する「求人対策セミナー」は常に満員の状態です。いかに多くの会社が悩んでいるかがわかります。


 根本的に人材採用を成功させるためには、「魅力のある会社」にする必要があります。しかし、魅力づくりには時間がかかります。魅力をアピールするには、なにより経営者自身に魅力がなければなりません。これに時間がかかります。経営理念を作り、浸透させ、教育制度を充実化するなど、なすべき課題が山ほどあります。


 人材採用のためには、「労働時間を短縮し、家庭で過ごす時間を確保すればよい」「運賃を上げてもらい、賃金を上げれば良い」「ホームページを採用重視の観点で整備し、求人票を長文でうまく書き、採用窓口の受け答えを訓練すれば良い」など、対策の方向性は分かっていても、「とにかく今すぐ採用したいのだ」という会社が多いのです。


 これらの内容は、根本的な採用対策として進めなければなりませんが、同時に即効性のある活動にも着手する必要があります。実際に採用に成功している会社を見ると、意外に現従業員からの紹介、勧誘に力を入れることが効果的なようです。


 ある運送会社は「紹介報奨金制度(10万円支給)」を新設し、求人一声運動を展開して数人のドライバー採用に成功しています。チラシを使って、学校の後輩や知り合いに一声かける。トラックステーションで隣のドライバーに声をかけるといった具合です。多くは地元の知り合いで、入社後も馴染みやすい利点があるそうです。


 また、他業態から大型免許を保有する即戦力の退職者を採用している会社もあります。例えば、自衛隊の退職自衛官などです。実際に採用している経営者は、「規律がしっかりしており、質の高い人材が採用できる」と言われています。紹介ルートと常に情報交流しているそうです。


 また、経営者自ら地元の高校に通い、自社の経営方針や教育制度について熱心に説明している会社もあります。「大型トラックの試乗会も提案している」と聞きました。地方では、自宅から通える会社は数が限られており、会社で免許の取得を支援していること、安全管理に十分配慮していることなどを説明すると学校側も安心して推薦してくれるそうです。


 他には、地元の自動車学校と連携して学校内に張り紙を出し、「免許取得支援制度」をアピールしている会社もあります。「免許を取って転職しよう」というアピール作戦です。採用戦略は身近なところに目を向け、経営者自ら全力で取り組むことが早道なようです。


 また、障害者雇用促進法の改正を機に、障害者雇用に改めて目を向けている会社もあります。運送会社には庫内作業を中心に、障害を持つ人たちにも十分可能な業務があります。障害者雇用により業務の標準化や効率化が進み、チームワークの向上により社内の気遣いや和が一層高まる利点もあるようです。長い目で企業の社会的責任を見据えた動きとも言えます。積極的に検討するべき対策でしょう。


 なお、一般的な求人対策としてはホームページの全面改訂やフェイスブックなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の戦略的な活用がお勧めです。現在、就職または転職を考えている人は、必ずネットで会社をチェックしています。自分が働けそうな会社か否か、を判断しています。ホームページやSNSの効果は決して無視できません。運送業に限ったことではありませんが、ホームページに力を入れていない会社は、そもそも求人の土俵から外れているともいえます。


 人手不足は厳しい現実ではありますが、半面、会社がステップアップする良い機会と捉えて、社内の見直し整備を進めていかれると良いでしょう。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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