第71回:人手不足の時ほど採用時に気をつける3つのポイント

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第71回:人手不足の時ほど採用時に気をつける3つのポイント

2015年12月19日

【質問】わが社の喫緊の課題は人手不足の解消です。あの手この手で採用を増やす努力をしています。本来は人物を見極めたいところですが、今は希望者がいれば即決で採用しています。人手不足の時に採用上の留意点があれば教えてください。


 今は運送業界全体が人手不足であえいでいます。どこへ行っても話題の中心は採用に関する悩みです。入社希望者がいればすぐに「明日から出社してください。入社書類は1週間後までに提出してくれれば結構です」と即決してしまうこともあるでしょう。


 しかし、入社時のチェックは絶対に欠かしてはなりません。最近、入社後の労務トラブルが急増している現実があるからです。トラブルの背景は様々ですが、会社の期待と採用者の現実が乖離していたことが大きな原因の一つです。よく調べもせずに採用し、こんなはずではなかったと後悔しても遅いのです。もし、安易に解雇などすると必ず大きなトラブルに発展します。お互いのために採用時のチェックは不可欠なのです。


 とはいえ、この厳しい人手不足の時代に、満足できる人材だけに絞る余裕はありません。運送業の経営で利益を出すためには、無駄な空き車両を作らないことが最も重要です。売り上げの機会損失を出さないことが利益確保の最低条件なのです。多少の不満は残っても最低クリアすべき条件を満たしている人物であれば採用するべきでしょう。採用時にチェックすべき最重要事項は三つです。


 第一に、過去の事故歴と違反歴の確認です。必ず運転記録証明書などの文書で確認します。場合によっては証明書の費用を会社が負担してでも、必ず採用決定前に提出してもらい、書面で確認することが重要です。運転免許証や危険物取り扱いなどの資格者証も必ず現物で確認しましょう。過去に改ざんしていた事例がありましたので、コピーの提出だけではだめで、現物確認が大事です。


 第二に必要なのは、健康状態の確認です。現在の健康状態だけではなく、運転業務に支障のある病歴があるかも併せて確認する必要があります。健康診断書または健康状態に関する誓約書により、必ず書面で確認します。口頭だけではだめです。会社には社員の安全配慮義務や健康管理義務があり、運転業務に支障がないことを確認する義務があります。採用してから「実は医者から長時間運転するなと言われていまして」と告げられても困ります。また、「病気がぶり返したので休みます」では何のために採用したのか、となります。健康状態の確認は必須です。


 第三に必要なのは、前職の退職理由の確認です。これは「退職に関する証明書」で確認します。入社希望者にこの書類を渡し、「前の会社に提出して、もらってきてください」と言えば良いのです。本人から請求された会社は必ず確認事項を記載して本人に渡さなくてはなりません。前職の退職理由が本人の言うとおりであるかを必ず確認しておきましょう。前の会社に電話で問い合わせている会社もありますが、文書での確認も併せて行うと良いでしょう。


 これら三つのポイントは無用な労務トラブルを避けるための最低チェック項目です。ここを押さえておけば大きな問題は避けられます。これらは採用決定後や入社後に徴求しても全く意味がありません。必ず採用決定前に確認しなければなりませんので、注意してください。


 なお、面接時に言葉遣いやあいさつの仕方が気になる、服装の乱れが気になる、文章が下手、文字が汚いなど、その他のチェック項目については、多少気になる点があったとしても、自社で立派に育てる覚悟で採用する必要があるでしょう。最初から理想的な人材などいません。会社で育てるしかないのです。


 人手不足の時代の採用戦略は、「採用基準は通常時より下げても良いが、譲ってはならない基準はしっかり押さえておく」ということになると思います。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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