第68回:経営戦略を抜本的に見直す時期が来た

連載トップへ

第68回:経営戦略を抜本的に見直す時期が来た

2015年11月 8日

【質問】わが社は車両40台の中小運送会社です。10年前から徐々に傭車比率を高めて保有車両を半減してきました。なるべく人と車両を持たない戦略で進めてきましたが、昨今のドライバー不足で車の確保に苦労しており、戦略の見直しを検討すべきと考えています。同業他社の動きと今後の方向性について教えてください。


 この数年で運送会社を取り巻く環境が大きな転換点を迎えています。その最大の要因は「ドライバー不足」です。つい最近まで不況による荷不足で、人余りの会社も見られる状態でしたが、約1年の間に雇用環境が激変してしまいました。数年前に雇用調整助成金の相談を受けていたことを思うと、私自身、雇用環境が逆転するスピードに驚かされます。


 しかし、もともと遅かれ早かれ人手不足が到来することはわかっていました。日本の人口構成を見ると、将来にわたり労働人口が減少し、人手不足が続くことは自明の理です。それが今回、企業が準備する間もなく、急に到来してしまったということです。


 運送業界が最も恐れていた事態が既に来ているという現実を直視し、早急に対策を打つことが重要です。今までの経営戦略を見直し、今後の労働環境を前提とした勝ち残り戦略を、すぐに練り直す必要があります。特に一部の物流子会社や一部の3PL業者、一部の大手中堅運送会社は影響が甚大であり、迅速な対策が求められるでしょう。中小運送会社においても同様です。

 
 従来、傭車の活用を前提として輸送業務を請け負ってきた会社は、安定的な委託先もしくは委託車両を確保できない可能性が高くなる、という認識のもとに、物流システムを維持する方策を再構築する必要があります。端的に言えば、人と車両を持たない経営から、人と車両を自社で確保する経営への転換です。荷主側も当然、長距離を中心にトラック輸送から鉄道や船舶を使った輸送へのモーダルシフトを進めるでしょうが、問題は他の輸送手段に代替ができない物流分野をどうするか、です。


 やはりトラックドライバーの要員をいかに確保するか、が重要な課題になります。中途採用や高齢者、女性の活用促進はもとより、広く物流に携わる人材を確保するためには、魅力ある会社作りに、今まで以上に金と時間を使う必要があるでしょう。これからは間違いなく、人と車両を持つ会社が一番強い時代が到来します。


 「労務費」は「コスト」から「資産(=強み)」に変化していきます。決算書上には表れない「運転者数」が簿外の資産として重要な指標になっていくでしょう。従来、戦略的に傭車比率を高めてきた運送会社は「原点回帰」して、自車比率を高める方向に方向転換することになるでしょう。傭車7割、自車3割の会社は同3対7に比率逆転を目指していくのだと思います。


 今、運転者を雇用している会社も安閑としてはいられません。大手中堅企業が正社員募集の攻勢をかけてきますから、人材を逃さない戦略を早急に打つ必要があります。


 採用するのも社員を他社に採られるのも結果は同じですから、今いる社員を大切にする取り組みを始めるべきです。その際、大事なことは経営者が思うだけではなく、社員の目にはっきり見える形で具体的に打ち出していくことです。社員親睦会を作ったり、役職に任命してやる気を高めるなど、わかりやすい形で「見える化」する必要があります。


 意識の高い会社は既に動き始めています。経営戦略や経営計画の見直しを迅速に行い、スピード感を持って実行する会社が勝ち残っていくのだと思います。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

過去の連載記事

連載トップへ
 

筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

GoogleAD