第67回:労務トラブルの対抗策は「文書で記録を残す」こと

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第67回:労務トラブルの対抗策は「文書で記録を残す」こと

2015年10月26日

【質問】最近、ある社員との間で揉め事がありました。現場の所長が勤務態度の悪いドライバーに「もう明日から来るな」と告げたところ、翌日、労基署に相談に行ったようです。先日、労基署から「不当解雇の訴えがあったので事情を聴きたい」との連絡を受けました。管理者の指示に従わず、無断欠勤をたびたびするような問題社員です。このような社員でも解雇できないのでしょうか。


 勤務態度が悪く、何度注意しても改めない。注意すれば必ず反発して翌日は欠勤。荷主への言葉遣いが雑で「担当のドライバーを替えてくれ」と荷主に言われる始末。仕事を安心して任せることが出来ず、戦力どころか他の社員の足を引っ張り、社内の和を乱す。こんな社員を解雇したいとの相談を受けたことがあります。


 問題社員でも、日本の法律には「解雇権濫用法理」という考え方があり、解雇をせざるを得ない相当な理由がない限り、簡単に解雇を認めないという実態があります。また、解雇する場合は、「解雇予告」など法律で定められた手続きを踏む必要があります。今回の質問者のケースでは、現場の所長が普段から積もり積もった怒りの感情で「明日から来るな」と言い放ったものでしょう。気持ちは理解しますが、もう少し冷静に対処すべきだったと思われます。


 該当の社員は、業務指示に従わない、勤怠状況に相当の問題が認められるなどの事実からすると、正しい手続きを行って書面で「解雇通知」を出していれば、本人から反論があったとしても、会社として正当に主張することができたものと思われます。


 ただし、今回のようにいきなり口頭で解雇する旨を管理者が伝えても、それで解雇が認められるとは思われません。問題社員への対策は普段から意識して行うことが肝心です。最も重要なことは、「記録を文書で残す」ことです。何か問題行動があれば、すぐにその場で注意し、その事実を「指導記録表」に記載し、保管しておく必要があります。本人から事実確認の署名をとっておくことも大事です。


 一般的な「始末書」では単なる「反省文」になっていることが多く、指導した記録が残りません。大事なのは会社が何月何日にどのような行動を注意し、指導したかという事実です。後日、言葉の応酬にならないよう、日常から記録を残すように管理者へ徹底する必要があります。


 また、解雇は就業規則に記載してある解雇基準に則って、その有効性が判断されます。当然ながら、就業規則や労働契約書などに解雇基準が明確に記載してある必要があります。解雇基準は想定される解雇事由を漏らさず記載しておかないと、後日トラブルが発生した際に、該当項目が無いため解雇不当と判断されるリスクがあります。就業規則の整備は最初に行う大事な対策と言えるでしょう。


 また、その際は「普通解雇」と「懲戒解雇」の基準を明確に分けて記載することが重要です。さらに、服務規律を含めて重要な社内ルールと制裁基準は再度、社員全員に周知しておくほうが良いでしょう。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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