第66回:わが社は分社を検討すべきか

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第66回:わが社は分社を検討すべきか

2015年10月12日

【質問】当社は物流センターを数棟保有し、複数の荷主から物流管理を包括して受託しています。保有車両は約70台、外注先は多数、運送部門は長距離3割、地場7割の比率で稼働しています。最近、ある荷主から「万一の場合の物流停滞を回避するため、分社を検討してみてはどうか」と打診されました。どう判断すれば良いのか迷っています。


 その荷主が言われる「万一の場合」とは、おそらく重大事故の発生や社内管理面の不備などを契機に事業停止処分になるなど、不測の事態を想定しているのかもしれません。事業停止処分になれば取扱業務も当然不可となり、仕事を傭車に回すこともできないため、荷主の物流が一時的にストップする可能性があります。特に1社の運送会社に包括して委託している場合、荷主が被る損害は甚大なものとなるでしょう。


 もし、事前にホールディング会社を設立し、そこで契約を締結していれば、分社後の実運送部門(分社後の事業会社)はその子会社となり、他の傭車先と並ぶ委託運送会社の1社となります。仮に子会社の1社が事業停止処分を受けたとしても、別の委託運送会社で補うことができ、大損害に陥ることを未然に防止できます。運送会社で分社を検討する会社が増えている理由はこれです。


 もともと組織再編は、より高度なグループ事業戦略の中で検討すべきものですが、運送会社においては、事業停止リスクへの対策として検討を始める会社が多いようです。本来、日常管理を正しく徹底すれば、行政処分リスクを減らせるはずですが、完璧な管理が容易でないため、最悪の事態を想定して備えるということだと思います。リスクの高い長距離部門を切り離して分社する会社が見られるのはそのためです。分社を検討する場合は、基本的に100%グループ会社にする必要がありますので、株式の集約から始めるのが一般的です。


 株式集約のやり方は株式譲渡や株式交換、株式移転など何通りかの手法があり、税理士など組織再編に詳しい専門家に相談することが必須です。また、分社のスキームも幾通りかやり方がありますが、一般的には会社分割の手法をとることが多いと思います。


 各手法によりメリット・デメリットがありますが、やはり契約関係等が包括的に承継できる会社分割の手法が最も適していると考えられます。運送会社は許認可事業であり、かつ通常は多くの荷主と契約しているため、手続き上のメリットが大きいからです。


 ただし、許認可のうち、産業廃棄物収集運搬処理や倉庫業、労働者派遣業など、一般貨物運送業以外の許認可を取得している会社は許認可の承継手続きに注意が必要です。分社等の組織再編においては、幅広い専門知識が必要であり、弁護士、会計士、税理士、社労士、司法書士、行政書士など各領域の専門家の知恵を総合して進めていくことをお勧めします。


 特に会社分割の場合は労働契約の承継において注意すべき点があり、社労士など労務面の対策に精通した方によく確認して進める必要があります。さらに、運送会社の経営管理について熟知している専門家に相談してください。分社後にドライバーの車両乗り換えが出来なくなり、想定外の非効率性が噴出することがあります。車両の配置、融通の仕方、特殊作業の分担など運送業の実務に照らして、どの選択が経営上最も良いのか、事前によく検討しておくことが重要です。


 なお、ホールディング会社の設立は事業承継対策としても大変有効な面がありますので、次世代への承継も併せて検討されると良いと思います。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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