第65回:「手待ち時間」は労働時間?

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第65回:「手待ち時間」は労働時間?

2015年9月29日

【質問】わが社では、荷主の都合で荷積みの待機時間が常時発生しています。その間は、できるだけドライバーに業務指示を出さず、「休憩しなさい」と指示しています。実際、全く作業をしていないので、社員も理解し「休憩時間」として管理しています。問題ないと思いますが、何か対策が必要でしょうか?


 この問題は法律の解釈に深く関連する内容なので、少し硬くなりますが、法律のご説明からいたします。


 まず、「休憩時間」について法律ではどう規定されているかを見ますと、労働基準法34条の3項で「使用者は休憩時間を自由に利用させなければならない」とし、「休憩時間の自由利用の原則」をうたっています。つまり、自由に利用できる時間だけが休憩時間だと規定しているわけです。これに関連した行政解釈として、昭和22・9・13発基第17号の通達では「休憩時間とは単に作業に従事しない手待ち時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間の意」だとしています。


 それでは、全く自由でなければいけないのかというと、通達では「休憩自由利用につき事業場の規律保持上、必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えない」として「外出につき許可を受けさせるのも事業場で自由に休息し得れば違法にはならない」(昭和23・10・30基発第1575号)と解釈しています。他に運送会社の労働時間に関する行政解釈として参考になる通達が二つありますのでご紹介します。


 昭和33・10・11基収6286号の通達で「トラック運転者に貨物の積み込みを行わせることとし、その貨物が持ち込まれるのを待機している場合(一般に手待ち時間という)において、全く労働の提供はなくとも出勤を命ぜられ、一定の場所に拘束されている時間は労働時間と解すべき」としています。つまり、いつでも作業できる態勢でドライバーを待たせる場合は休憩時間にはあたらないという解釈です。


 一方、昭和39・10・6基収6051号の通達では「貨物の到着の発着時刻が指定されている場合、トラック運転者がその貨物を待つために勤務時間中に労働から解放される手あき時間が生ずるため、その時間中に休憩時間を1時間設けている場合にあって、当該時間について労働者が自由に利用できる時間」であれば「休憩時間である」としています。これらの行政解釈からすると、いわゆる「手待ち時間」は労働時間であり、「手あき時間」は休憩時間となります。


 この違いは文章では何となく分かりますが、現実の作業現場では実に微妙な判断になると思います。会社が「休憩できるはずだから、休憩しなさい」と言っても、実際には不可能な実態が現場にあれば「それは休憩時間とは認めない」と解釈される恐れがあります。荷待ちの時間が休憩時間として認められるためには実態を「手あき時間」にする必要があります。その場合、勤務実態として次の4条件が満たされるかがポイントになるでしょう。


 (1)駐車して車両から離れることができる(2)車両(または貨物)の監視義務を課していない(3)休憩時間を自由に利用できる(その場合でも構内にいるようにと指示することは可)(4)次の作業時刻が決まっている(それまでの時間は全く自由)──の4条件です。それでは、労働時間をめぐるトラブルを防止するために会社が事前に検討すべき対策は何でしょうか。これは五つぐらい考えられます。


 例えば、(1)できるだけ前記4条件に適合するように勤務実態を見直す(2)休憩ルールを明確にし、個人ごとに休憩時間の記載を徹底する(管理者にも徹底)(3)業務に応じた労働時間の算定方法について、あらかじめ労使協定等で明確にし、労使間で確認しあう(トラブル防止の観点)(4)予定を超えて発生する待機時間相当分については、荷主から適正な運賃を収受する方向で交渉を行う(5)実質的に作業していない手待ち時間については、通常の賃金とは異なる賃率を適用することにつき、労使間で話し合う(協定の検討)などが考えられます。


 なお、労使協定を結べば万全ということではありません。労働時間については、あくまでも勤務の実態により個々の会社ごとに判断されますので、早めに再確認をしておくと良いでしょう。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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