第64回:強い会社の戦略には理由がある

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第64回:強い会社の戦略には理由がある

2015年9月15日

【質問】小さい運送会社の2代目社長です。規模の拡大よりも、社員がイキイキとやりがいを持って働ける会社を目指したいと思っています。運送業界で業績を伸ばし、成功している会社を見習いながら経営するつもりです。勢いのある会社で参考にすべきことがあれば教えてください。


 「社員がやりがいを持って働ける会社にしたい」との思いは大変素晴らしいことです。「成功している会社を見習う」という姿勢も大変良いことだと思います。しかし、大事なことは見習うべき会社の表面だけを見て、真の狙いや戦略を見過ごしてしまうと、ただ優しいだけの低収益会社を作ることになりかねません。


 私は、20年以上の間に全国で数多くの運送会社を見てきました。業績が順調な会社、社員教育に成功している会社など、経営の参考になる会社は各地に存在しています。それらの会社は確かに荷主や取引先、それ以上に社員を大事にして教育にも力を入れています。しかし、それだけではないのです。


 最も大事であり、強調しておきたいことは、強い会社になるための分岐点が、売り上げや利益などの数字にこだわる厳しさがあるか否か、という点です。


 ともすると会社の表面だけを見て、社員思いの優しい会社づくりをすれば良い会社になり、好業績につながると勘違いする方もいますが、実は、戦略的思考で徹底的に業績にこだわるからこそ伸びているのです。


 表面が優しく見える会社ほど、実は社員に厳しい会社です。例えば、日頃から「人を大切にする」「社員は家族だ」と唱えている社長がいます。常に公言していますから、あの会社は人材教育に熱心で安心できると高く評価されています。しかし、それは社長が善人だからでも、人柄が良いからでもなく、「実は良い人材を集めるための戦略なのだ」と話してくれました。


 その会社は、あいさつ、マナー、清掃に大変細かく、社員指導を徹底していますが、その狙いは「評価を高めて仕事をとっていくため」とのことです。定期的な社員との懇談会や年1回の社員旅行をする目的は「せっかく採った社員を辞めさせないため」と言いきります。社長は「売り上げを伸ばし、利益をあげることが会社経営の最低ライン」と明言しています。


 利益が残せない会社はどんなに評判が良かろうと、結局は社会が必要としていない会社、との考え方です。強い会社になると、自然に仕事が集まり、規模が拡大します。その会社も、社長一代で車両台数100台を超える規模に成長しています。高収益をあげていますので、給与は他社より高く出しています。その分、社員に厳しい会社で、特に、指示したとおりにやらない社員には大変厳しく、徹底した成果主義です。


 成功している会社を見習う場合、内側の実態をよく見ることが重要です。真の狙いを理解せず、美辞麗句の評判など表面だけを見て真似をすると、厳しさに欠けた、ただの緩い会社になる可能性があり、ぬるま湯のゆでガエルになってしまいます。売り上げも利益も低迷している会社で社員がイキイキと働く職場などありません。会社が伸びているからこそ社員が将来に夢を持ち、やりがいを感じるのです。


 強い会社にはその理由があります。それは表面からは見えない裏の目的を理解しなければわかりません。その中身を見れば、巧みな戦略と計算に驚くことになるでしょう。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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